Poco a poco にじいろシリーズ
フランス語 épigraphe「エピグラフ」
英語で epigraph ___本の巻頭に記される銘句
フランス語のアルファベット「e」は口を少しすぼめ半開きで「ウ」と発音します。最初は何かだらしのない中途半端な声出しに感じてしまうと思いますが
コツがわかれば 頻繁に使えるもの。
「é」になると口を横に開きながら「エ」と発音。日本人には発音しやすい音になります。だからエピグラフにはウピグラフにならないよう e
に「’」accent aigu(アクサン テギュ)をつけています。
「エピグラフ」は仏和大辞典(小学館ロベール)では
女性名詞 ① 碑銘、碑文 ② 銘句:書物の巻頭や各章に置かれた短い引用文
オフィスしのも スタッフの私がフランスに滞在していたころ。
仏語の専門書、雑誌や料理本も含め ノンフィクション作品に親しんだものです。
コロナ禍の中で今 改めて読み始めたのがアルベール・カミュの「ペスト」。
この冒頭で語られる「エピグラフ」が物語を読み進める上で 非常に重要な役割を担っていることを感じました。
以下 「エピグラフ」引用
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Il est aussi raisonnable de représenter une espèce d’emprisonnement par une autre que de représenter n’importe quelle chose qui existe réellement par quelque chose qui n’existe pas. _______Daniel DE FOE
ある種の監禁状態を他のある種のそれによって表現することは、何であれ実際に存在するあるものを、存在しないあるものによって表現することと同じくらいに、理屈にかなったことである。_______ダニエル・デフォー
Title : La peste
Author : Albert CAMUS
poche folio
Publisher : Gallimard édition en février 1972ISBN
: 978-207036042-0
タイトル : ペスト
作家 : アルベール・カミュ
訳 : 宮崎 嶺雄
新潮文庫 (新潮社)
1969年10月30日発行
2004年1月20日 64刷改版/2020年5月20日 94刷
ISBN : 978-4-10-211403-2
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冒頭に記されたこの「エピグラフ」はカミュが引用した イギリスの作家ダニエル・デフォーの言葉です。英語から訳されたのでしょう フランス語。理解できても自分では作文できないような美しいフレーズ。和訳だって 母国語でもこんな風になかなか書けない。カミュは英文で読んだのでしょうか?
デフォーは「ロビンソン・クルーソー」の作家として知られていますが
カミュを遡ること200年ほど前の人です。デフォーも「ペスト(の記憶)」を著しています。
カミュはデフォーのこのフレーズを読んだ時 身震いしたのだと思います。
それは異なる時代の共通する社会に漂う雰囲気を絶妙に活かし 読者に「ある種」の感覚を察知させることだったのだと私は感じています。
デフォーは無人島での孤独や実際のペスト禍によるロックダウンの経験からこの言葉(フレーズ)を 彼の著書の中で紡ぎ出しています。
カミュはその言葉を物語の始まる前に「エピグラフ」として引用することで「ペスト」はフィクションだが読み進むうちにノンフィクションのような感覚を読者に抱かせることに成功しているのではないでしょうか。
「エピグラフ」はどの本にもあるわけではないだけに これほど印象的なものは記憶に刷り込まれそうです。
オフィスしのも は デザイン&エンジニアリングオフィスです。
研究施設や病院で使用される什器や環境を浄化する スクラバー装置などの販売支援の考え方を組み合わせてデザイン・設計しています。メーカーや各専門分野の企業さんや技術者と連携し プロジェクトの成功を目指しています。
ゴールが見えないプロジェクトについても 最初にチームを同じ方向に導くテーマを示唆できるかどうかが大切だったり全てだったりします。なんてことのない読書での気づきですが 2020年だからこそメモしておこうと思います。