開放機器の紹介(サーモグラフィ 3/3)

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産技研には、多種多様な工業用設備・機器があり、依頼試験、開放機器があります。
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http://www.tri.pref.osaka.jp/SikenKikiDB/

今回、第3回について説明します。
1回目 サーモグラフィとは
2回目 サーモグラフィの利用について
3回目 利用の際の留意点

利用の際の留意点

サーモグラフィでは、物体から放射される赤外線(当研究所の装置では、8~13μmの遠赤外域)のエネルギー量を測定し、温度に換算しています。赤外線は、いわゆる可視光、X線などの電磁波の一種であり、赤外線が物体に当たる際、物体表面である割合で反射、吸収、透過します。吸収された赤外線は、物体内部の熱となり、物体自身の温度を変化させ、変化した温度に対応した赤外線を物体が放射することになります。反射、吸収(放射)、透過の割合は、物質や物体表面の状態、温度によって異なり、これらの値は、放射率表などで知ることができます。

サーモグラフィで正確な温度を測定する場合は、測定対象の放射率を与える必要があります。しかしながら、測定対象の物質が未知なものが多くあり、通常は放射率を1としてを用いることも良くあります。この場合は表面温度を正確に測定する、すなわち絶対温度を測定することはできませんが、測定範囲内の温度の高低や温度の時間的変動など相対的な温度を知ることができます。放射率を推定する方法はいくつかありますが、簡易的な方法としてJIS A 1423(赤外線放射温度計による放射率の簡易測定方法)があります。

また、ガラスや厚みのあるプラスチックは、赤外線を通さないので、これらの材料の反対側の物体の温度を計測できません。空気や気体は透過の割合が大きく、それらの背後の物体の温度を測定することになります。金属は表面での反射が大きく、反射した周囲の温度を測定することになります。ただし、放射率が既知の黒体スプレーや黒体テープを表面にコーティングすることで表面温度を精度良く測定できることもあります。