フランス語 女性名詞 La Forêt Noire「フォレ・ノワール」

オフィスしのも おやつ フランス語 フォレ・ノワール 黒い森 チョコレート ダークチェリー 女性名詞 黒い森のさくらんぼケーキ シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ

オフィスしのも です。食の歴史。大昔からドイツとフランスの国境というのはさまざまな変化を遂げてきました。ドイツ菓子の筆頭にも挙げられる「シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ(黒い森)」は 隣接する仏はアルザス地方へ渡ると「フォレ・ノワール」と呼ばれるのです。

女性名詞につく冠詞は「la」ラ。
森は la forêt「ラ・フォレ」。
黒い森 la forêt noire「ラ・フォレ・ノワール」は実際にドイツにある地方、そして森の名前です。


フランス語は 一部を除いて 形容詞が名詞の後にくることがほとんどです。
noir「ノワール(黒い)」が「フォレ(森)」の後にきていますね。
英語で the black forest in germany と捉えると違いがよくわかります。このことは英語を話す時の前のめりのピッチが学生英語において得意でなかった自分には 後に形容をつけていく話し方がとても優しく感じらたものです。

「フォレ・ノワール」をいただいたのは 今から20と余年前です。
それまでも無意識に口にしたことはあったかもしれないけれど。
それはフランス生活にもどっぷり慣れ親しみ フランスの家庭菓子のどっしりした生地もお気に入りだったころ。
ある日 健康診断のために絶食した後 ご褒美のデザートとして 小さな salon de  thé(ティサロン)に入り選んだのが 日本人には馴染みのあるフワフワのスポンジが味わえた「フォレ・ノワール」でした。ホームシックに縁がなかった自分がこれほどまでに 久々のスポンジの柔らかさに感動したことに加えて チョコレート菓子なのに「チョコレートケーキです!」と押し付けてこない全体のバランスに惹かれました。そして数ヶ月の間 月に1度と決めて この「フォレ・ノワール」だけをいただくために リュクサンブール公園を対角線上に歩いて横断して 出たところにあるパリのカルチェラタン(学生街)の お店へ通いました。

数年後 帰国して落ち着き始めて 忘れていた「フォレ・ノワール」をご近所のお店で見つけました。
なんとカルチェラタンのあのティサロンでの柔らかさ、控えめな甘さ、セオリーから外れない「黒い森」に出会ったのです。
その後お店の棚には陳ばなくなるまで 自分にとって特別な存在でいてくれました。当時は意識していませんでしたが このお店だけでなく「フォレ・ノワール」は日本ではだんだん首都圏でも地方でも見かけなくなってきていると書いた記事を見かけます。


「フォレ・ノワール」のセオリーは 
○シュヴァルツヴァルトの名産品さくらんぼ(アメリカ産のダークチェリーしか手に入らない場合もあるが)
○ココアスポンジ生地
○キルシュ(さくらんぼの蒸留酒)
○白いホイップクリームとチョコレートコポー(削ったチョコレート)でデコレーション

日本において一世を風靡したわけでもなく 流行語大賞にノミネートされるわけでもなく チョコレートケーキの1種として ドイツ菓子のひとつとして 親しまれ そして 他の人気商品とのバランスで控えめに存在する「フォレ・ノワール」。しかし ドイツ南西にある森林地帯では シュバルツヴァルト(黒い森)地方シュバルツヴァルトの森を表現し その地域で採れるサクランボをあしらった伝統菓子であり 消え去ることはないのです。国境はあれど森の反対側のフランスのアルザス地方にも伝わった両国の伝統菓子は 隣接するオーストリア、スイスなどでも親しまれるお菓子です。

 

ジェノワーズショコラ(ココアのスポンジ生地)の懐かしい柔らかさと グリオット(ダークチェリー)に染み渡るほのかなキルシュの風味、控えめな甘味のシャンティイ(ホイップクリーム)の重なり合う優しさに魅了され 日本人の自分にとって ある日を境に人生における思い出の品となることはご縁でしかありません。
日本では見かけなくなることはあっても 誰かの心の中に残ってゆく 森の景色のようなお菓子です。

さて 思い出やご縁は違っても「フォレ・ノワール」のファンは多く 行く先々で調達しリポートする方もいらっしゃるくらいです。自分自身も 老舗喫茶店やチェーン店、さまざまなカフェでこのケーキに出会ってきました。その多くは日替わりのケーキではなく お店の看板の品として長年メニューに綴られているものもあります。「あ、こちらはドイツ語『シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ』表記だ!」とか ホールケーキの切り分けショートでなく 丸や長方形、正方形型で一つずつ成形されたものなど 気になり始め 楽しみが広がります。

前述のとおり ご近所のパティスリーが 一番好みのテイストだったので 店頭に陳ばなくなって数年は経っていたのに「黒い森」をホールで注文できるかお願いしたことがありました。快くオーダーを受けてくださり記念日のケーキにしました。
そして 今年になって記念日が近づき どこのお店に頼もうかと思っていたら アルコール漬のグリオットの瓶があったのも幸いしてか自分でやってみるのはどうかとふと思ったわけです。冒頭にも記したように どっしりと混ぜわせて焼くタイプのフランスの家庭菓子が定番の自分には 軽めのスポンジを裁断しクリームや具材をはさみ デコレーションをするお菓子をつくるイメージはありませんでした。
やってみて青天の霹靂。
森を想像しながら カルチェラタンを思い出しながら あっという間でした。作り手により 幾重にも食感が変わるやもしれません。


雪国をご存知の方は チョコレートコポーをあしらう面積を工夫して 白い雪を連想させるホイップクリームをたくさん見せるデコレーションにされるかもしれません。思い切ってチョコレートクリームにされていることもあります。プロの方も セオリーにとらわれないタルト生地を使ったり 違うフルーツも添えたりされている「フォレ・ノワール」。

この季節 紅茶でなくとも あちらこちらのコーヒーショップで春のお豆がお店を彩っています。
「サンドライド エチオピア」の ダークチェリーの風味を効かせたブレンドが多いようです。
これらのコーヒーと「フォレ・ノワール」と合わせてみるのもおすすめです。

最後に ドイツのシュバルツヴァルトの森は広大ですが。
フランス語で「小さな森」と言いたい場合「森」にはもうひとつ bois(ボワ)という単語が男性名詞であります。ちなみに男性名詞につく冠詞は「le」ル。
la petite forêt(ラ・プティット・フォレ) とするとまさにその通りながら le petit bois(ル・プティ・ボワ)というのが日常的です。これは机上ではなく 現地にて耳にして はたまた森へ行ってみて体感するニュアンスかも知れません。おっと!これが数少ない例外の petit(プティ)。この形容は名詞の前にくるのです。理屈で覚えず 何度も話してみる!言ってみる!そんな日々を思い出すおやつでもあります。

 

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