熱処理:ばねの有害な残留応力とその除去

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残留応力の図式

残留応力とは

金属材料に外力を加えて塑性変形を与えると、その後、必ず残留応力という応力が発生します。
残留応力とはどのようなものなのか上図で説明いたします。
1、材料に外力を加えて変形させて、その後、力を除いても変形が残るまで曲げた場合。
2、曲げ加工時において、外側は引っ張られて伸びる方向の力が、内側は圧縮して縮める方向の力が働く
3、続いて力を除くと材料はスプリングバックで戻った後、ある程度曲がった状態になるこの状態では外見からは何も力が働いているようには見えないが、材料内部には元の形状に戻ろうとする力が存在する。
この力の方向は曲げの外側で圧縮方向、内側では引張方向である。この内部に発生している目に見えない内部の力を残留応力といいます。

残留応力の種類と効果

このような残留応力はその効果から、ばねにとって有益な残留応力と有害な残留応力に分類されています。
有益な残留応力としては、初張力、ショットピーニングやセッチングにより導入される残留応力があげられますが、
有害な残留応力の代表は、ばね成形時に発生する残留応力ですが、
この残留応力はできる限り除去しないと
ばね成形を行った直後の曲げ加工の内側には、元の形状に戻ろうとする引張方向の残留応力が発生している、
そのままばねを使用すると、設計上の応力に加えて、この残留応力が追加されることになり、疲労強度や耐へたり性において設計上の性能が得られないなど、色々な問題を起こす要因になります。
この残留応力が大きい場合には、力を加えないままでも、遅れ破壊などを引き起こすことがあり、何らかの方法でこの有害な残留応力はできるだけ取り除く必要があります。
この解決策が低温焼なまし(低温熱処理)です。

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