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漉き場をめぐる

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今週も和紙の産地へ.色々な所を回って、ヒアリングと商品や事業のアイディアの意見交換.
本当に多彩な漉き場がそろっていて、写真の製紙所は主に印刷用紙など機械で大量に漉く仕事をしています.
(建物は明治の始め頃のものだそうで、中も天井が高く格式があります)
かと思うと、手漉きでこだわった商品をつくるところも数多く、日本の産業の縮図のような産地です.

組合を経由している関係上、まんべなく漉き場と組んでいますが、それぞれに合わせた処方せんを考えねばならず、一筋縄ではいきそうにありません.

産地のデザイン

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某和紙の産地へ.漉き場を廻ってヒアリングをしてきました.
普通の和紙の産地は、主に手漉きの和紙を伝統的な作り方でつくる事を残す、という方向性でモノづくりをしています.こちらの産地は、一大産業として発展したという背景もあって、単に伝統的な事だけではなく(もちろんその方向性ものこしており人間国宝もいます)「紙」としての表現力、商品力やデザインを高める工夫を続けてきました.
こちらでは、和紙の産地にしては珍しく、手漉きの和紙も機械漉きの和紙も同じ団体でまとまっているし、漉き場の中にも手漉きと機械漉きの両方しているところも少なくないです.また、印刷や物性、価格の対応のためパルプも使うし、洋紙的な紙を漉く漉き場も珍しくないですが、その技術の基本は和紙の技術を独自に発展させたものとなっています.
そういった漉き場の技術はものすごいですし、紙のデザインも秀逸です.

この産地の場合、そういった創意工夫による成功が逆に足かせになって、間に入る問屋任せの商品作り馬鹿利していた為に、問屋の企画力の低下や海外シフトによって危機に陥っています.

ヒアリングでは、その漉き場の技術をお聞きするのもありますが、そういった変化への対応する意気込みをはかって、一緒にモノづくりをしていく所を探る目的もあります.まずは、変わる意欲のあるところとモノづくりをしていくつもりです.

人と人とが出会う場のつくりかた

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山納さんの「コモンカフェ」という本が発売になりました.東梅田の旭屋書店では、ビジネス書の所に平積みされていて、店員の手書き推薦文があった上に午前中に寄ったのにかなり減っていました.

山納さんは、現在は大阪21世紀協会ですが、以前の職場のメビック扇町時代に色々とお世話になりました.彼は、会社員の傍らコモンカフェという日替わりマスターのカフェを経営しています.

本の内容は、どこかで山納さんがおっしゃっていた事をわかりやすくまとめたもので、色々と断片的に伺っていたはなしがつながって理解できる内容です.彼の一貫した「場を作って、それを続ける」こと「文化的に豊かなスタイルの模索」の行動の軌跡が解ります.
なんといってもすごいのは、その色々と模索して現在に至っているコモンカフェのマニュアルや企画書、収支計画などの細かい資料も巻末に掲載されている事です.こういうものは、お店にとっては企業秘密にも当たる部分なのですが、それをあえて公開していることのスゴサを感じます.

奥山氏の講演会

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京都府のベンチャーコンペのキックオフとして、デザイナーの奥山清行氏の講演会に行ってきました.

1時間半程でしたがかなり盛りだくさんの内容で、充実した講演会でした.内容の前半はフィロソフィの話で、後半はマセラティと山形でのケーススタディの話でした.
話していることは結構当たり前のことを述べられていましたが、現場での体験をベースに語られているのでリアリティが高く説得力がありました.また、その当たり前のことをつないで考えられているので、思考が理路整然としていて理解のしやすいプレゼンテーションでした.
最後におっしゃっていましたが、プレゼンテーションをするということは自分の思考をまとめることととらえていて、どうもパワーポイントも今回の発表に合わせて制作したように感じました.
思考からプレゼンテーションまで、基本に忠実な考え方とそれに情熱を持っていることを貫いているのが印象的でした.

奥山氏はイタリアでの活動も長く、中小の工房でのモノづくり、ファッションなどのブランドの考え方などに精通していて、その辺のノウハウを山形での地場産業の活性化に活かしているようでした.「デザインの作業の2/3はコミュニケーション」として、広い意味でのデザインを考えられているので、今後も彼と伝統工芸とのコラボレーションが注目されると思います.

竹尾ペーパーショウ Osaka

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大学の授業が終わってから、大阪で開催されている竹尾のペーパーショウへ.
実はそれほど定点観測してないのですが、原さんがやっている年とは違い、紙そのものの説明(営業)をより前面に押し出した展示だった様に感じます.
説明員が多くいろいろな質問にも丁寧に答えていたのが印象的で、そういうところにブランドは生まれるのでしょうね.


AXISでも内省的なブランドデザインの特集をしていましたが、「ブランディング」というコトバ自体おかしいですよね.

コルビュジュエ関連

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知り合いで、一緒にNPOの理事をしていただいている広島大の千代さんが監修したコルビュジエ関連の展覧会が開催されています.

ギャルリータイセイ「ル・コルビュジエ:フィルミニの教会-光の軌跡-」展
森美術館ル・.コルビュジエ展

千代さんはコルビュジェを中心にした建築デザインの研究家で、特に2006年に完成したフィルミニの教会の展示は興味深そうです.かなり線の細い華奢な方なのですが、フランスやインド、アフリカなど各地を飛び歩いています.

どちらも夏頃まで開催されているので、私も機会をみて行ってみたいです.

人に見せる・見るということ

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最近は、学生に口先だけでいろいろ言ってもピンと来ないので、私も自主的なテーマを選んで学生と一緒にプロセスを見せながらデザインの作業をしています.

他にもサンプルとして描いた図面など見せることがありますが、インハウスでやっていた頃よりも、キチンとプロセスをふんだデザインやJISに則った正確な描き方の図面を描いたりするようになりました.
仕事の場合は、一緒に仕事をしているメンバー間での情報の共有が図れればOKなのですが、それを手本とするべく見ている人がいると思うと、その作業や成果の客観性が気になってきます.
何でもそうなのですが、外向きに発信するということは人に見られるということになり、その為にはその仕事をより深く考える必要があります.

人に見せるということは自分を見るということでもあるのですね.

イノベーションのデザイン

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奥出直人さんの「デザイン思考の道具箱」を読みました.

メーカーでの従来の「新商品」というと、既存のチャンネルに対して既存の商品に新しい機能や価値を加えたものを開発するというものが殆どでした.その場合の開発手法はどちらかというと技術オリエンテッドなものが多く、技術革新によって商品そのものの価値を大きく上げる事に注力されていました.
ただ状況は大きく変わり、テクノロジー自体のコモディティ化が進んだことで、技術を「どう使うか」という事が注目されています.確かに、以前の会社でロボットの開発をしていた技術者が、「たいていの事は技術的にはやろうと思えば出来る.だけど、それをどう組み合わせて良い商品(ここではロボット)にして良いか解らない.」と言っていた通り、イノベーションは技術そのものから、技術をどう社会化するかということに変わっています.

この本では、IDEOのデザイン手法とそれを発展させた経営手法をベースに、日本的な経営にフィットさせた手法として、デザインの手法をより進化させて、ビジネスの様々なプロセスでのイノベーションを加速させる事を説いています.デザインに関しては、単なるスタイリングや商品に新しい価値を加えるという事ではなく、イノベーションの手法とされています.
本の中でも何度もiPodのイノベーションに関して触れています通り、iPodやiTunesは技術的にはそれほど新しいものではありませんでしたが、それらを使って新しい生活の価値を提案することにより莫大な売り上げを上げています.最近の例ではiPhoneと国内の「デザインケータイ」を比べると解りやすいです.
そのような「イノベーション」を行う組織や人材の育成というと、そのようなスキルを教える教育機関は無いし、企業内でも個々人のタレントに期待するレベルでした.デザイナーは定性的な価値をどう高めるか、ということを日頃考えて活動をしていますので、そのようなスキルを一番持っている人種といえると思います.

ただ、この本の中でも一部危惧されていますが、デザインの現場を見て感じる問題点は、
・意思決定者がそのような新しい価値(つまり定性的な事がイノベーションであること)に対して理解できない.
通常ビジネスの現場では、マネージャーは定量的な指標でジャッジメントをするので、デザインや使い勝手などの基本的な定性的価値ですら、個人の好き嫌いや投資額のみで判断される場合が多くあります.
これは、iPod以降も単に機能だけまねた商品が日本メーカーから発売され続けている事でよく解ります.単にウォークマンの後追い商品の様な感覚で、機能や形状をまねる=iPodと同様な価値を提供できる、という勘違いを意思決定者がしている事に拠ります.
・デザイナー自身のタテワリ意識で自身の価値をビジネスのイノベーションに発展できない
特にインハウスに多いと思いますが、コンセプトをスタイリングに落とし込む事には力を発揮しますが、総合的な商品価値を上げる為のより広い領域への参画にしり込みするケースが多いように思います.これは、個人の資質の問題よりも、教育機関や企業内でのOJTのあり方が(当然ながら)古いままであることが問題なのだと思います.
ただ、IDEOなどのデザインの手法をアカデミックに分析して商品開発に結びつける企業が増える中、デザイナーのあり方というものは本当に変わっていかないといけないのだと、この本を読みながら強く危機感を持ちました.

とにかく、芸術系の大学でデザインを教える時代は終わったのかもしれません.


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ブリコラージュなデザイン

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けんちくの手帖へ.駒井貞治さんの「借家生活」というテーマでした.
「建築をデザインする」ことに辟易した駒井さんが、借家を構造に触れないレベルで改造し、その部材を持って次の家へ引っ越すというプロジェクトを中心に建築というものを捉え直したお話で、非常に面白いものでした.

その場にある借家を自分に合わせる為に、身近なもので作り上げる手法を見ていて、ブリコラージュの手法だと感じました.イベント後雑談していると、元々建築はブリコラージュ的なものだったとの指摘がありましたが、現代の「キッチリ設計する」建築に比べるとかなりブリコラージュ的といえると思います.
プロダクトデザインでは、エンジニアリングの思考で構築され「寄せ集めて自分で作る:器用仕事」的な事を排除した事で成立していきました.しかしながらブリコラージュ的な考え方は、エコデザインの観点から「その場での生産と消費」する為の手法として有効だと思います(seccoなど)し、オルタネイティブで小規模なデザイナーメーカーの活動は、そういう傾向があると言って良いと思います.
そういう意味で、建築の世界ではこのような感覚が認知されつつあるのかもしれませんが、プロダクトデザインの分野では殆ど誰も知らない考え方なので、もっと掘り下げてみる必要はあるでしょうね.

残念なロボットを増やさないために!

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某書店より入荷の知らせがあったので、ロボットデザイン概論を取りにいきました.
ざっと読みましたが、かなり良い本です.

内容は、ロボットのデザインという以前にデザインやデザインのプロセスそのものを丁寧に解説してあり、その上でロボットのデザインを論じてあります.著者の園山さんは、エンジニアやデザインの勉強を始めた人に読んで欲しい、と言われていましたがまさに教科書的な内容です.
デザイン(特にプロダクトデザインの分野)のプロセスというものは我々デザイナーは何気なく行っていますが、実際にはそれほど体系立ったものもなく、書籍も少ない分野です.この本はかなりその部分も細かく解説してあり、実践的な内容です.
また、何よりロボットのデザインを、単なるスタイリングや象徴的な意味ではなく、人間との関係性の中で形成されるより広い意味のあるものである、というメッセージを非常に解りやすく説かれています.だからこそ、ロボットのデザインは、美大を出た人間だけではなくエンジニアなどの総合的な知識を持った集団の個々にその必要性があるということがよく解ります.


とりあえず、書店から某美大の授業に向かいましたが、冒頭1年生に対してこの本を勧めて、ついでにロボットのデザインの面白さを伝えました.若いデザイナーがロボットのデザインに具体的な興味を持ってもらえれば、この本の意義があるといえるのでしょう.