ばねの表面に塗膜を形成させる操作を塗装と呼びます。
塗膜の厚さは1回塗りで数μmから数10μm程度で数回重ねた塗膜層でも、
100~数100μm程度ですが、近年は、防食の優れた高性能合成樹脂塗料の開発が進み防食と、
外観の良さから小物ばねに多く採用されるようになってきています。
ばねに用いる塗装の塗膜条件は、容易にはがれず、適度な硬さと伸び、弾性を持っていて、
少々の外力が加わっても変形したりせず、
外部(水、油など)からの付着物により、色、つや、強度の劣化が無いことです。
塗装作業の主な対象製品は、自動車用懸架ばねなど、使用環境から防食対策が必要なばねが対象となり
内装用ファスナばねなどは塗装が行われないのが通常です。
また密着コイルばねの場合も、膜厚の均一性を欠きばね特性を変化させたり、コイル密着部に膜厚形成がないことにより防食性を著しく低下ささせるためあまり用いられない。
塗装作業の工程は、前処理→塗装→乾燥の3工程からなります。
塗装には塗料の状態により、液体塗装、粉体塗装に分類されます。
液体塗装
1、はけ塗り:どこでも施工できるが、生産性は低く防食効果も低い、防錆よりも識別に使われる。
2、浸漬塗装:バネを直接塗料槽に浸漬する方法で、塗料粘度、処理量、振切り条件等を個別に管理する必要があり、1回の浸漬で得られる膜厚は10μm以下です。
3、スプレー塗装:エアースプレー方式が代表的で、塗料を霧状にしてばねに吹き付け、仕上がりは良好ですが、1回に塗装できる膜厚は15μm以下です。
4、電着塗装:水溶性にした塗料の中にばねを浸漬させ、補助電極とばねの間に直流電流を流すとイオン化した塗料はばねに塗膜を形成する。均一な膜厚が得られ、塗り残しがないが水素脆性が発生する。電着塗装はアニオン塗装とカチオン塗装に分けられます。
5、静電塗装:塗料を微粒化し、高圧静電場で塗料粒子を負に帯電させ、ばねをアースにしておくことで、静電引力によりばねに吸着する方法です。
粉体塗装
静電塗装の原理でプラスチックの粉体をばねに付着させ、粉体を加熱溶融して被膜をつくる塗装方法を粉体塗装と言います。粉体塗装は、エポキシ、ナイロン、ポリエチレン、塩化ビニール等が良く使われています。
目的は、ばねと他部品の接触による異音防止、外観向上、防錆などで、溶剤系塗料のような環境汚染がなく、厚膜非常に良い。一般的に前処理でりん酸塩被膜処理を施工します。