オイルテンパー線:取扱上の注意事項

オイルテンパー線は優れたばね用鋼線ですが、場合によっては意外と脆い面もあります。組織が焼戻しマルテンサイトであり、且つ高強度であることから取扱上次のようなことに注意する必要があります。

  1. 酸洗、めっきなどは水素を吸蔵し、水素脆化を招きやすいので極力避ける。
  2. 強い曲げ加工、ばね指数(D/d)の小さい加工は、ピアノ線・硬銅線より高強度なので避ける。特
    に太径のオイルテンパー線の場合は折損しやすいので注意を要します。
    強い曲げ加工、ばね指数(D/d)の小さい加工は、ピアノ線・硬銅線より高強度なので避ける。特に太径のオイルテンパー線の場合は折損しやすいので注意を要します。
  3. ばね成形後はすみやかに低温焼なましを行ないと、高強度のオイルテンパー線ほどばね成形彼の残留応力は高くなる傾向にあり、1000MPa以上の引張残留応力がばねの内側に発生する場合もあるので、そのまま放置すると一種の遅れ破壊である置き割れや応力腐食などの原因となることもあります。
  4. ばね成形後の低温焼なましなどの熱処理に硝酸塩系のソルトを用いる場合、分解したソルトは腐食性があるので洗浄を十分に行う必要がある。できればソルトバスの使用は避け、熱風炉や電気炉などを用いる方が良いです。

    各種弁ばね用鋼線によるばねの疲れ限度線図

    各種弁ばね用鋼線によるばねの疲れ限度線図