1月7日の数字:年間販売予定数を2ヶ月で達成

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キリンのビールテイスト飲料が、ばか売れしているようです。
アルコールゼロでありながら、ビールのような味わいを持たせる。
その技術力は一体、どのようなマーケットを切り開いたのでしょうか?

キリンフリーという飲み物がある。ビールテイスト飲料、つまりアルコールは入っていないけれども、ビールのような味を楽しめるドリンクだ。これがばか売れしている。

「フリーは4月の発売から2ヶ月弱で当初年間目標の63万ケースを突破。年末までに当初目標の6倍以上、400万ケース弱に拡大する勢いだ(日経MJ新聞2009年12月28日付3面)」。実にお化けヒット商品である。

開発のキッカケは道路交通法の改正にあった。飲酒運転はまかり成らぬとなり、ロードサイドの飲食店などは軒並み売上激減。飲めないのなら行かないというお客さんが増えたのだから仕方がない。そこでノンアルコールドリンクで、すこしでも客足を取り戻せればとの狙いが込められた商品でもあったはずだ。

ところが、これがまったく違ったターゲットに支持された。近所の酒屋さんで聞いてみたところ、毎日買っていくお客さんが何人もいるという。それがどういう人たちかおわかりになるだろうか。

肝臓に病を抱える人たちだ。早い話、アルコールが大好きなあまりドクターストップがかかってしまった方々である。体をこわしてしまうほど好きな酒を飲むことができない。でも、晩酌はしたい。そこにぴたっとはまったのが「キリンフリー」だったのだ。

「潜在ニーズは(中略)妊娠・授乳中の女性にも強いことがわかった(前掲紙)」。開発時には想定していなかったターゲットが浮かび上がってきたわけだ。技術力が切り開いたマーケットである。

実際に飲んでみたところ、ビールは「麦芽百パーセントをもってビールと呼ぶ」ことを良しとするビール好きとしては、はっきりいって「?」マークが付かないこともない味わいだった。それでも良いのだと思う。

技術を突き詰めすぎるとメーカー志向に陥り、ユーザーニーズと乖離したら、無意味なオーバースペックに陥るリスクは確かにある。しかし、この「キリンフリー」の事例が教えてくれるのは『〜もどき・〜風』で、かつローコストな代替品が秘める可能性ではないだろうか。