10月8日の数字:紙おむつ市場1500億円

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紙おむつ市場で、大人用と乳幼児用の逆転が起こりそうです。
この事例から、何を読み取ればよいでしょうか。

紙おむつといっても赤ちゃん用ではない。大人用である。08年度には大人用紙おむつの市場が、乳幼児用に並んだという。「ここ5年で見ると乳幼児用は1割縮む一方、大人用が4割拡大(日本経済新聞2009年10月6日付3面)」

いささか古い話になるが、今から15年ほど前にある衛生用品メーカーのマーケティングに関わっていた。そこが大人用パンツタイプの紙おむつで新規参入することになり、その4P戦略を企画立案させてもらった。

その当時でもすでに、15年後のマーケットは読めていたのだ。なぜなら、何回も繰り返しているけれど、人口推移は完全に確定した未来だから。つまり2010年ぐらいにはいわゆる高齢者がどれぐらいになるかはほぼ完璧に読めていた。

当時の大人用紙おむつ市場は、有力4社がほぼマーケットを押さえておりユニ・チャームがトップ、私が関わっていたメーカは後発故に4番手だったが、三番手を狙えるぐらいの競争状況だった。

つまりシェア争いはそれぐらい均衡していたのだ。そしてユニ・チャームも、まだダントツのトップというわけではなかったのだ。ところが15年先を見据えて、さまざまなマーケティング活動を行ってきたユニ・チャームは今、圧倒的なトップシェアを持つに至っている。

そして「最大手ユニ・チャームは国内で大人用の生産ライン増強を勧め、12年度にも国内売上高のうち大人用が乳幼児用(08年度で750億円)を上回る(前掲紙)」そうだ。この先見の明。

あの「和民」のワタミも、いま積極的に介護事業に乗り出している。少々遅れ気味ではあるが、今後の市場を読めば外食にこだわるより介護に賭けるべきだという判断が背景にある。ちなみに渡邊会長は「ワタミの将来は農業が事業の柱になっている」と、以前お話を伺ったときにおっしゃっていた。

日本の食料自給率と農家の推移を考えれば、農業にチャンスがあると見るのは賢明な判断だろう。農家、特に専業農家が減り続けていること、現在の担い手が高齢者ばかりであり、若い世代がまったく増えていないことは深刻な問題だ。

といった案配で、確定した未来、確定とはいえないまでもほぼ確実に読める未来はいくらでもある。そこに向けて10年単位の戦略を考えること。これが経営者にもっとも必要な能力ではないだろうか。