工場見学@サワダ製作所(後編)

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サワダ製作所様の工場見学
で、しっかりと3Sの大切さを再認識させていただきました。

さ~いよいよ後半は、TOCの勉強会。

澤田社長様はTOC(Theory of Constraints:制約理論)の講師の資格をお持ちで、通常は、2~3日かけて行う内容を今回は特別に「1時間」に凝縮してお話していただくことになりました。(無理は承知で~)

TOC勉強

 

 

 

ご教示戴いたTOCのエッセンスを以下にまとめてみます。

※但しこれは、あくまで1時間の講義の中で、私の頭に残った内容です。誤解や勘違いも多々あろうかと思いますので、お気づきの点があればどうぞご指摘下さい。

 

【制約理論の「制約」って何のこと?】

・制約には3種類ある。1番目は「キャパシティー制約」。工程1→工程2→工程3→工程4という製造の流れの中で、一番処理の遅い工程が、全体の足を引っ張っている。その「制約=障害」となっている工程を見つけ出し、そこをカイゼンすることで、GOAL(目標)に到達できる。

(感想) ボトルネックになっているところの、詰まりを解消してやるって事ですよね。この「制約」の意味はよく理解できます。

・2番目は「市場制約」。工程のボトルネックは解消して、100%スムースに流れるようになった。が、しかし、市場からの注文が70%、80%しかない。こんな場合には、制約解消のために、注文を多くとることが必要。

(感想) 当たり前といえば当たり前ですよね~ どうやって、注文をたくさん取るかみんな必死に考えているのだから・・・ 澤田社長によると、現在の不況では、間違いなく「市場制約」状態とのこと。これは納得。

・3番目は「時間制約」。納期が遅すぎて、顧客の不満足を引き起こしている状態。お客様を待たせない仕組みとして、澤田社長が例に挙げられたのが、マクドナルド。来客が増えてきたら、臨時カウンターを出す。何人以上行列ができたら出す等のマニュアル、仕組みもできている。

(感想) なるほど。ハンバーガーの製造工程はスムースにできても(←キャパシティー制約は解消)、注文を取る段階でお客様を待たせてはダメ~ダメ~って事ですね。

 

【S-DBRを和訳すると、太鼓+ゆとり+ロープ 何これ?】

・S-DBRとはSimplified DBRのこと。単純化したDBR。では、DBRとは・・・

・DはDrum(太鼓):お客様がパンパン太鼓を叩いている状態=注文!

・Bはバッファー:その製品を作るまでのリードタイム(ゆとり、納期)

・Rはロープ:製品を作るために必要な材料を投入(=ロープで)すること。

・DBRとS-DBRの違いについては、詳しくは判らなかったが、伝統的なDBRは「上記3つの制約のうちどれでも一つの制約をテコにして、全体を従属(カイゼン?)してゆくこと、に対して、S-DBRはシンプルに「市場制約」のみを対象にするらしい。

・一言で言うと、S-DBRとは、市場(Drum=注文)にあわせて原材料を投入(Rope=製造開始)するが、投入するタイミングは製造のリードタイム(Buffer)を考えて投入タイミングを決定すべしという考え方。

(感想1) 「リードタイムにあわせて、製造を開始する。」って当たり前っちゃあ、当たり前かな~と思ってしまうが、こういう表現をすると意味合いが違ってくる。 「リードタイムにあわせてしか、製造を開始しない。」 

(感想2) つまり、手待ちの時間、ヒマな人があっても、納期より早めには決して作らせない。造り置きはしない。ヒマがでたら、3Sなどの「カイゼン活動」をして貰うとの事。

(感想3) 弊社でも、工具セットなどを余分に組んでおくことがあるが、必ずしもそれが良い事かどうかわからないなぁ~ バラの仕掛品のほうが、汎用性がある。つまり、工具セットを1個からでも早く造れる仕組みを考えたほうが良いってことですなぁ・・ これは、目からウロコです!

 

■いや~ここまでで、30分が経過してしまいました。

TOCとかS-DBRとか横文字ばっかで、難解な理論と思いましたが、おぼろげながら、どんなものかがわかってきました。

残りの30分は、私と澤田社長の仮想問答形式で、もう少し理解を深めて行きたいと思います。

Q:「注文にあわせて、タイミングよく材料を投入し、製造する」ということですが、要するに在庫を減らすことが第一目的なんでしょう?

A:在庫は結果的に減ってゆきますが、最優先すべきは在庫ではなく、「納期遵守率のアップ」つまり「短納期」なのです。

Q:ちょっと待ってください。「納期短縮」を目的にすれば、「在庫」は増える方向に行きますよね? 逆じゃないですか? 弊社では欠品させるな!っていうと在庫が増えるし、在庫を減らせ!っていうと欠品するし・・・・ どうして、「短納期」を目標にすれば、「在庫圧縮」に繋がるんですか?? 是非、知りたいです!

A:よどみなくフローを流すことは短納期に繋がると同時に、在庫も減少するのです。

Q:そうなるんですか~ (半信半疑)

A:はい。それこそが、TOCの真髄なのです。

Q:でも、そう言われれば・・・・スムースな製造工程があれば、途中の在庫もなくなり、納期も短くなる・・・ 理屈といえば、理屈。理想といえば理想。 しかし、どうやれば、スムースなフローができるのでしょうか?

A:先ほど工場で見られたと思いますが、本日製造する予定の各製品に、緑、黄、赤の色分けがしてありましたね。S-DBR管理表と呼んでいるもので、毎日作成しています。

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Q:はい、工場のあちらこちら、各部署に掲示してありました。

A:緑色の製品はまだ納期に余裕のある状態、赤色は特急で処理しないと間に合わない状態、黄色はその中間です。従って、工場では赤の注文から先に処理して、次に黄色というように優先順位を色で管理しています。

Q:えっ、ちょっと待ってください。製品によって造るのに2ヶ月かかるものや、1日でできるものなど、リードタイムが異なりますよね。色の基準はどうなっているのですか? 例えば、2ヶ月以上納期がかかるものは緑、3日でできるものは赤とかそういう決め方ですか?

A:いえいえ、ちょっと誤解があるようですね。そういう決め方ではありません。2ヶ月かかる製品でも、3日でできる製品でも、投入された直後は緑なんです。2ヶ月かかる製品で、今から2ヵ月後に完成納品すれば良い場合は「緑」です。今から3日後に納品しなければならない注文であっても、その製品のリードタイムが3日であれば同じく「緑」です。お判りですか?

Q:なるほどね~ ということは、3日前に「緑」で製造がスタートした注文品も、翌日の管理表では「黄」になり、その次の日には「赤」になるってことですね。つまり、「赤」はまもなく納期が来ますよ~っていう注文なんですね。

A:はい、その通りです。 但し、お客様から通常納期(リードタイム)が2ヶ月の製品に対して、どうしても1ヶ月、1.5ヶ月で納品して欲しいというような場合もありますよね。その場合は、最初から「黄色」状態でスタートします。 もっと極端な場合は、もちろん特急料金にはなりますが、いきなり「赤」からスタートします。現場では、「赤」状態の製品から製造しますから、別に「特急だ~」って騒がなくても、自然に優先順位が高くなり、「結果的に特急処理」されるわけです。

Q:はっは~ そうですか~ よく理解できました。 でも、特急料金を払ってもらっても不可能な納期もあるでしょう。その辺はどうやって決めているのですか?

A:タッチタイムって聞かれたことはありますか?

Q:いえ・・・(恥ずかしげに)・・・すんまへん、知りまへん。

A:知りまへんでは、あきまへん。(笑) タッチタイムというのは、その製品だけにかかりきったら、どれだけの時間で完成できるか?という時間のことです。タッチタイムはリードタイムの1/10というデータもあります。

Q:突貫工事でやったような場合ですなぁ~ 弊社でもときどきそんなことがありますわぁ~ それをタッチタイムって言うんですか~ それが、限界の納期ですよね。それ以上はいくらお客様のご要求でも無理ですわなぁ。

A:その「タッチタイム」よりやや長めの時間を「緑」の期間に設定にします。そして「緑」の期間の3倍をリードタイム(=バッファー)として設定するのが、TOCの経験則になっています。

Q:ちょっと確認させてください。 例えば、タッチタイムが5日の製品があるとしますよね。そしてそのちょっと長めっていうと1週間ですね。それが緑の期間ですよね。リードタイム(=バッファー)は3倍して、3週間に設定されるるのですね?

A:そうです、そうです。

Q:リードタイムの3週間を「緑」、「黄」、「赤」と1週間ずつ3等分して、優先順位を識別管理するわけですね。 

A:はい、その通りです。そこで、先ほどのご質問の回答です。お客様が超特急で要求されたときは、いきなり「赤」から工場に指示しますが、ちょうど1週間余裕があるんです。タッチタイムが5日だから、赤からスタートしても、突貫工事でギリギリセーフになるわけです。

Q:な~るほどね~ うまくできてますね!

A:やっと、ご理解いただけましたか~?(笑)

Q:あっ、有難うございます! (やや、興奮気味)

A:いろいろ申し上げましたが、先ずは何と言っても、全員が「納期を遵守する事の大切さ」を認識することが出発です。評価指標を上手に設定することも重要ですね。その上で、S-DBRの仕組みを導入すれば、「短納期」と「在庫圧縮」が必ず達成できます。

Q:はい、頑張ります! 先ずは社員の意識改革ですね!

A:現状に満足することなく、毎月S-DBRの結果を分析しています。例えば、全体の工程に占める「赤」の割合をチェックしています。5~10%が標準ですが、5%以下になるとバッファーを長く取りすぎている(=余裕の見すぎ)の可能性があり、逆に、10%以上では、工程に何か問題が潜んでいる可能性があることが、リアルタイムに分析できます。

Q:いや~奥が深いですね。1時間のセミナーでしたが、たくさん学ばせて戴きました! 澤田社長様、有難うございました。

■ここまでお読み戴きました皆様、お疲れ様でした~

TOC理論にご興味がある方は、直接澤田社長様にお尋ね下さいね! 講師の資格をお持ちなので、社内教育なども、(格安で?)お願いできるかもしれませんよ~ 

弊社も、まず、3S(5S)を完成してから、TOCに取り組みたいと思います。その折はどうぞ宜しくお願い致します!