第24回BMBインタビュー(株式会社コージィデザイン)

株式会社コージィデザイン

BMB:佐藤さんはBMBの登録が2007年9月と、BMBがサービスを開始して早々の登録ですね。ありがとうございます!
 創業は2001年とお聞きしました。当時は「Cosy Design Studio」筆文字とロゴデザインが強みのデザイン事務所として開業されていますね。
 昨年(2015年)は15周年を期に屋号も株式会社コージィデザインと改められ、いよいよ第2ステージへということですが、今までの経緯を振り返ってもらえますでしょうか。

株式会社コージィデザイン

佐藤:最初は、セールスプロモーション(以下SP)を扱う広告代理店で6年半務めました。仕事はスーパーや量販店の商品棚に設置するPOP(店頭で用いられる販売促進のための広告媒体)や売り場資材、DMなどの販促物の企画・制作が中心でした。そこでロゴデザインを手がけることは少なかったのですが、POPの制作で筆文字を扱うことは多かったです。2001年に独立してからも、暫くはその広告代理店の仕事を手伝っていました。

 独立して2年目ぐらいでしょうか、たまたま同世代のデザイナーのホームページを見つけて、カッコいいポスターやおしゃれなお店のロゴなどが載っているのを見て、ロゴデザインに憧れてグラフィックデザイナーを志していた頃の想いが沸々とわき上がってきました。これからのキャリアを考えた時に、このままでいいのかなと自分の立ち位置を見直すきっかけにもなりました。

佐藤さん

 独立して3、4年目になると勤めていた頃よりも忙しくなり、SPの傍ら企業カタログや商品ちらし、パッケージデザインなど、何でもできるデザイナーを売りに仕事をこなしていましたが、逆に言えば特長がないということ。仕事のパートナーである妻からも「何かに特化したほうがいいんじゃない」とアドバイスをもらいました。何の為に独立したのかということもあり、それからは機会があるごとに「ロゴデザインが得意です」とアピールするようになりました。

 それが効いたのかどうか分かりませんが、とある制作会社からロゴデザインコンペの仕事が舞い込んできました。クライアントへの提案数を増やすための社外要員だったのですが、結果は見事採用!腕を見込まれて、その会社から立て続けにロゴデザインの仕事が来るようになりました。また、同じ頃に東京の建築設計事務所から商店舗ロゴの依頼が来ました。この方とはパートナー契約を結ぶかたちで、複数の店舗ロゴのデザインを行いました。代理店を通さないスタイルでしたので、ロゴデザインの成果は、弊社のホームページにも掲載することができました。そうして少しずつロゴの成果が増えていきました。

 リーマンショックの影響で仕事が止まってしまうことがあり、この機会にホームページを作り直し、見せ方もロゴデザインのみに絞りました。ロゴデザインの受注を増やすための準備でしたが、まずは、知ってもらわない限り何事も始まりません。いかにネットや書籍に載ることで知名度を上げるかを考えたときに、権威のあるデザイン年鑑に作品が掲載されることが必須条件だと考えました。JAGDA(日本グラフィックデザイナー協会)への入会もその時期に決断しました。

 ロゴデザインの提案には自分なりに毎回ベストをつくし、お客様にも喜んでいただいていたのですが、果たして「そのデザインのクオリティはベストなのか?」ということに自問自答の日々で、そこを見極めるために意を決してデザイン年鑑に応募しました。それなりに自信はあったのですが、最初の2年間は見事に落選しました。しかし、年鑑に収録されている作品を見て、自分との差は何なのかということを考え、挑戦し続けることでリアルに分かってきたことがあります。

 例えば、遊び心が足りなかったとか、独自性がなく弱い印象だったとか、課題を見つけられるようになりました。また、次からはその課題をクリアできるようにしようと思い、これで完成したと思っても、もう一日粘って考えられるようになりました。そうすると不思議といいアイデアが浮かび、2007年には、「BARブリキ」でJAGDAとタイポグラフィー協会の両方で入選を果たし、合格点に達するラインが掴めるようになりました。

BARブリキ

 2010年には「吉田養蜂園」のロゴデザインで、タイポグラフィー年鑑2010ベストワーク賞をいただきました。コンセプトは、蜂の巣穴から、美味しい蜂蜜が滴り落ちる様子を、社名の頭文字「Y」に見立てて表現しました。丸みを帯びた形状と、イエロー1色のみのシンボルは純粋な蜂蜜の美味しさをストレートに表現しています。和文ロゴタイプは、オリジナルでデザインしたもので、シンボルマークの丸みを帯びた形状と相性の良いイメージで設計しました。全体的には、シンプルモダンなイメージですが、どこか懐かしいノスタルジックな雰囲気を併せ持っています。

吉田養蜂園

 実は、吉田養蜂園への最初の提案では、和文ロゴタイプは普通のゴシック体でした。しかし、お客様の意見から「ゴシック体は他社にもよくあるので差が分かりにくい。もう少し個性的かつ女性受けするようにして欲しい。」との指摘を受け、ゴシックの角を落として、書体のボリュームや文字間などを細かく検証してみたところ、満足のいく結果に仕上がりました。
 この仕事をきっかけに、細部の検証と、ブラッシュアップしていく重要性と、デザインには余白(間)が大切だということを学びました。


BMB:コージィデザインさんのサイトは、Googleのキーワード検索「ロゴ 大阪」で1番か2番に表示されるほど精度が高いのですが、何か工夫はされているのでしょうか?


佐藤:筆文字を売りにしていた2006年頃から作品をブログにアップするように心がけてきました。 SEO(検索エンジン最適化)本などを見ると、“外部サイトとの相互リンクが有利”とのことなので、ホームページとブログとを連動し、作品紹介の続きはブログで行うようにしています。細かい手間は大変ですが、SEO的には相当強固になっているはずです。

 投稿数が増えるとともにネットでの問合せが多くなり、ようやく大阪でロゴをデザインするデザイナーとして見られるようになってきました。

佐藤さん

 次に取り組んだのが、お客さんが不安に思わないサイトづくりです。デザイナーは資格制ではありませんので、プロを名乗っていても力量や価格の差は当然あります。そこで、廉価なコンペ形式のロゴ制作サイトとの違いを分かりやすく記述し、安さ・早さを謳うサイトとの差別化を図りました。さらに、デザイナーが好みそうなスタイリッシュさと、一般のお客様への分かりやすさとのバランスを意識し、好印象を持ってもらえるサイトデザインを心がけました。

 併せて2015年から法人化に踏み切ったわけですが、会社形態を変えることで信用度を上げ、大手の仕事をもっと受注したいという意図がありました。すぐに効果が出るとは思ってなかったのですが、今年(2016年)は、大企業からのお問い合わせが増えてきました。

ロゴデザイン

BMB:佐藤さんのロゴデザインの印象は多彩で、一人のデザイナーが考えたとは到底思えないのですが、発想に何かコツのようなものはあるのでしょうか?


佐藤:言葉からの可視化や、絵に変換する引き出しが自分でも多いのかなと思いますが、むしろ、自分で自分の「型」を決めず、お客様のイメージを引き出してデザインするように心がけています。そうすれば、デザインの源泉は無限ですから(笑)。そのためには、お客様との最初のヒアリングの質を良くすることが肝心です。可能な限り直接お会いして話を聞きますが、自社をどう見られたいのか?事業内容や将来のビジョンなども聞いて、お客様の感覚を大事にします。

 ヒアリング時に、ポジショニングマップ(下図)を見せて、デザインの方向を見定めていきます。目指す方向をはじめに共有しておくことで、提案も通りやすくなりますし、修正が必要な場合でも、的確な判断ができます。

ポジショニングマップ

BMB:では、最後にこれからどのようなデザイナーを目指して行きたいか、お聞かせいただけますか?


佐藤:これからもジャンルはロゴ中心で、基本的なスタイルは変わらないと思います。根っからの職人的デザイナー気質なので、細部にまでこだわったクオリティの高いロゴを作り続けたいと思っています。

 また、ロゴデザインもその根底には、CI=理念・精神的なものや、VI=ビジュアルイメージ、BI=行動規範・ブランド戦略などが複雑に絡んできますので、これらの事もトータルでコーディネートできるよう、各方面の専門家と協力しながら勉強と実践を重ねて、より精度の高い仕事ができるようにしていきたいと思っています。

ロゴデザインの現場

BMB:本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。益々のご活躍を期待しています。