本と本屋さんの未来はどうなるか?

今日のマーケティングブログは、本と本屋さんの未来について。
インターネット(=ネット通販=Amazon)と電子書籍の2つの技術革新が、
書籍流通にどんな影響を与えるかを考えてみました。

1坪あたり年間126万円

3月31日をもって閉店したジュンク堂書店新宿店の売上である(日経MJ新聞2012年4月8日付1面)。過激な閉店セールで注目を集めた同店だが、単位面積当たりの販売効率でみれば、入れ替わることになるビックカメラ878万円の約7分の1と大きく差をつけられている。

ビックカメラが扱うさまざまな商品と本を比べれば、本は場所を取る割には単価が低いために販売効率が悪い。では、同じく単価がそれほど高くない雑貨と比べてみればどうか。ロフトの坪単価は239万円ある(前掲紙)。雑貨と本を比べれば、雑貨のほうが回転率が高いということなのだろう。

これが本の商品特性である。一部のベストセラーを除いては多品種小量販売が定めであり、そのために書店は巨大化を目指さざるをえない。けれども、よほどの好立地でもなければ、単価が低いために単位面積当たりの売上は伸びない。そこに目をつけたのがAmazonである。リアルな書店のデメリットはすべて、バーチャルな書店のメリットになる。その後のAmazonがどうなっているかは、説明するまでもないだろう。

さらに日本の書籍は、特殊な流通形態を経由して販売されている。いわゆる『出版取次』の存在と『委託販売制度』である。

委託販売制度により、書店は売れなかった本を取次に返品することができる。書店にとっては、在庫管理が不要となるためメリットがあるように思えるが、販売価格の決定権がないこと、返品可能であるために売り切ることに対するモチベーション低下などのデメリットもある。しかも日本の書籍流通はトーハン、日販の2社がシェアの70%以上を占めている。

日本の書店が置かれている現状を、5F分析してみると、下記のようになるだろう。



リアルな書籍に対するニーズがなくなることは、この先もないだろう。けれども、特に実用書や学術書などは、検索性やデータの加工性を考えれば電子書籍の方がユーザーメリットの点で分がある。さらに電子書籍なら、出版社サイドでも「それほど売れるとは思えないが、良い本」をリスクを取らずに出すことができる。極端な話、電子書籍なら、著者が自分で出版することも可能だ。


電子書籍というTechnologicalな変化が、やがて大きなうねりとなったときに、書店はどう生き残るのだろうか。日経MJ紙には生き残りのための方策として「地域密着型」「おすすめ型」「空間・時間消費型」の3つが記されていたが、個人的には書店での本の単品販売の未来はかなり厳しいと思う。




DAIKANYAMA T-SITEのように本も売るショップへの転換か、丸善丸の内本店のような目利きによるこだわりの書棚作りなどが、大都市圏でのモデルとしてはありうるだろう。あるいはヴィレッジヴァンガードのように、そこに行くこと自体が楽しく、かつ買いたくなる仕掛けが必要になるのではないか。