診断士の20年

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先月のことになるが、中小企業診断協会の総会で、20年継続会員として全国の仲間と共に表彰をいただいた。

学卒で就職したT社を30歳で退職。その後フリーランスで仕事をしていて診断士という資格を知り、1次試験と2次試験の間に二男坊の出産を挟みながら、何とか合格。その息子がもうすぐ22歳になる。

この間、実習の指導員や、更新研修の講師、はたまた協会の役員等々、診断士の資格にまつわる仕事や役割もたくさんさせていただいた(いる)。

今から思えば、あっと言う間の20年だったような気がする。
無我夢中というほど一生懸命でもなく(関係者の皆様ごめんなさい)、確かなビジョンや目標を持っていた訳でもなく…。今でも、仕事の基盤は、根なし草というか浮き草というか、危ういものだと思っている。おまけに、自分の嫌な仕事にはほとんど出会わず、好きな仕事だけしてきた気がする。

しかし、周囲の方々や環境には、たいへん恵まれていた。資格取得当初から、仕事を手伝わせてくださったり、診断士仲間の集まりに誘ってくださったり、仕事の紹介や推薦をしてくださったりと、たくさんの先輩や仲間にお世話になった。

そんな中で、診断士になる以前から現在まで、変わらず自分のミッションだと思っていることがある。
自分で感じているほど、世間からは求められていないかも知れないが、この機会に文字にしてみることにする。


それは、私は、2つの異なるモノの橋渡し役をするのだということ。
橋を渡すのは、例えば、男性と女性の間、ベテラン(自分より年長者・先輩)と若手(自分より年下・後輩)の間、あるいは、IT屋とIT苦手屋の間、そして、経営者と従業員の間。

男性と女性の間に橋を渡すと言っても、愛のキューピットではない。
異なる土壌や価値観を持っているが相互に理解し合い協力する必要があると思われるモノ同士の、通訳をしたり理解し合う場を作ったりということなのである。

性別は、もちろん女性であるが、学生時代から圧倒的に男性の多い環境で過ごすことが多く、今も診断士は95%が男性という世界だ。ここで女性が稀少価値としてだけ扱われるのではなく、男性に同化するのでもなく、自然にあるがままに(若くなくとも、美形でなくとも)認められていく場を広げたい。ずっとそう思っている。
ワーク・ライフ・バランスも、ダイバーシティも、私の原点はここにある。

また、チームで仕事をする時や会合の時に、いつの間にか、年齢順の上から数えた方が早いような場面が多くなってきたが、男性の社会秩序に属していない分、あるいは息子たちと接する機会が持てる分、若手の考え方や価値観を吸収し、ともすれば堅くなりがちな自分と同年代のオヤジ達(失礼)に伝播したい。そう心がけている。

ITに関しては、もっと単純だが結構難しい。ITの得意な人と苦手な人、いや、ITを自分の仕事の優位性のために活用しようと思っている人とITを信用していない人、新しい物に飛びつく人と敬遠する人、専門用語を日常語として使う人とアレルギーを起こす人、ケースに応じて、そこそこ使える立場の人間として昔とった杵柄を活用しながら、両者の垣根をほくして行く。
そもそも、この橋渡しは、ITコーディネータが、皆担っているミッションでもある。

そして、経営者と従業員の間。労使が対立関係ではなく、同じ方向のベクトルを持ったとき、企業の力が最大化されることを、経営者にも従業員にも分かっていただく。経営者の考えを従業員に客観性を持ちながら伝え、従業員の現場で起きていることを経営者にしかと気づいていただくのが、私の役割であり、やりがいだ。

立場上、「先生」と呼ばれることが多いが、私はこの呼び方は好きではない。
まして、同業同士で呼び合うのは、(他の方が使う分には一応妥協しているが)みっともないと思っている。
自分からは、(よほどの先輩をやり過ごすとき以外)使わない。

それよりは、良き橋渡し役として、コーディネータ、伴走者の役割を果たし、いつでも気軽に声をかけていただける存在でありたいと思う。

20年もたって、たいへん心もとないが、これからもこのスタンスで行くしかないなぁ~と、そんなことを考えている今日この頃である。