3月11日の数字:労働生産性10年で1.6倍に

  • 投稿者:  
  • 表示回数 1,792

一度、破綻した会社を再生する。
緩やかな下降線をたどっているけれど、
未だ生きながらえている企業の立て直しより
破綻からの再生の方がやりやすいのかもしれません。
ポイントは「意識」です。

京セラといえば「アメーバ経営」。徹底した小集団組織で生産性を管理し向上させる。稲盛会長が請われて再建役となった日航でも、おそらくこのやり方が導入されるのだろう。現時点では、うまくいくかどうかはまったくの五里霧中状態だけれど。

とはいえ、すでに成功例もある。コピーメーカー大手・三田工業のケースだ。同社は2000年に経営破綻し、京セラが買収した。そして「アメーバ経営」を取り入れて、見事に復活した。

具体的に、何をどう変えたのか。

端的に言えば『日本舞踊』を『阿波踊り』に変えたのだ(日本経済新聞2010年3月11日付朝刊1面)。破綻後、三田の工場に乗りこんでみると「社員の動きが日本舞踊のようにゆっくりだった(前掲紙)」という。見た目は優雅で良いのかもしれないが、そんな悠長な動きをしていて生産性が上がるはずもない。

ここに京セラ流のやり方を持ち込んだ結果、今やその動きは「手足を休みなく動かす阿波踊りに変わった(前掲紙)」。そして労働生産性は10年前の1.6倍にまで高まった。

これはあくまで結果である。動きを変えるためには、まず意識を変えなければならない。社員の意識とは、すなわち企業文化であり風土である。そこを京セラは変えたのだ。変えるために使われたツールが「アメーバ経営」である。

といって「アメーバ経営」が、よほど特殊なやり方をしているかといえば、そんなことはない。何か魔法の杖のような道具やシステムを導入しているわけでもない。経費項目を細分化して、きちんとチェックする。「在庫は悪。設備投資は効果を厳しく見極める。ほかの集団の改善事例はすかさず吸収する(前掲紙)」。

当たり前といえば、それまでである。逆にいえば、この当たり前のことを当たり前にできない企業や、職場がいかに多いことか。日航の改革はようやうスタート地点に立ったばかりで、これからさまざまな問題点が明るみに出てくるのだろうが、おそらくは当たり前のことを当たり前にできていないケースがいっぱいあったのではないか。

フリーで、一人でやっていると、当たり前以上をやらないと食べてはいけない。逆にいえば、組織はそれだけ人を甘やかすリスクがあるということだ。このことをさら突っ込むなら、組織をうまく作れば、人を甘やかせる余裕を生み出すことが可能だということである。

結局は、組織を活かすも殺すも、組織を構成するメンバーの意識次第。これが、アメーバ経営と京セラミタの事例から学ぶべき教訓だろう。