3月9日の数字:1% vs 10%

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同じ百貨店なのに、
日本と韓国では利益率が天と地ほども違う。
その差は一体どこから生まれてくるのでしょうか?

同じ百貨店なのに、日本と韓国では利益率が10倍も違うという(日本経済新聞2010年3月9日付朝刊1面)。「売上高営業利益率はサムスングループを源流とする新世界やロッテ、現代の三大百貨店で10%前後。1〜2%の日本の百貨店とはケタ違いだ(前掲紙)」

なぜ、こんなにも差が出るのか。韓国の方が事業環境に恵まれているからだろうか。決してそんなことはない。「韓国の人口は日本の半分以下で少子化も急。内需縮小の深刻度は日本を上回る(前掲紙)」のだ。日本より悪い環境の中での高収益を叩きだしている韓国の百貨店には一体、どんな秘密があるのだろうか。

外商をやらず、上得意向けの店外イベントもやらない。その理由は非効率だからという。日本の百貨店では考えられないやり方だ。その代わりに「徹底して無駄を省いた少人数運営と、売上高が下位のブランドを半年ごとに入れ替えるスピードが高収益を生む(前掲紙)」

コスト削減を徹底し、売れ筋商品を並べれば、日本では時代遅れの遺物と思われている百貨店も生き残れるのかもしれない。逆に考えれば、なぜ日本ではコスト削減と売れ筋特化ができなかったのか、という問いが浮かんでくる。

百貨店かくあるべし、という既成概念の枠に囚われていたからではないだろうか。これに対して、韓国の百貨店は、純粋に利益を高めるためには何をやればいいかを突き詰めていった。答えはとても単純なのだ。

売れる商品を置く。コストは可能な限り削る。その代わり、過剰な接客をやめる。確かにたまにデパートなどに出かけて、ちょっと商品を見ようとすると、手持ちぶさたにしている販売員がすぐに寄ってくる。あれはちょっと勘弁して欲しいと思う。

昔(販売員の方が何でも詳しく知っていた時代)とは違い、商品情報について今では、たいていの人がたいていのことは知っている。例えばファッションなら、自分にはどんなスタイルやカラーリングが似合うのかも、自分できちんとわかっている人の方が圧倒的に多いだろう。

と考えれば販売員などは不要なのだ。こうした顧客サイドの変化を韓国の百貨店経営者はわかっているのではないか。一方日本は「百貨店の接客はかくあるべし」といった、何十年も前の商習慣に縛られて変化できなかった。そこに彼我の差が出たと考えるべきなのだろう。

同じ構図は、何も百貨店業界だけに当てはまるわけではない。製品情報については、顧客の方が幅広く深く知っている可能性が高い時代。そのことをメーカーも踏まえておく必要がある。