2月3日の数字:20倍の高速化を実現/10年連続10万行の男

  • 投稿者:  
  • 表示回数 2,187

10年間連続して10万行ものプログラムを書く。
それがどんなにすごいことなのか。
なぜ、そんなことをできるのか。

20倍の高速化は画面表示速度のお話。ACCESSのCTO石黒邦宏氏が、携帯電話向けブラウザーの新製品を開発した。その画面表示速度がめちゃくちゃ速いという。何しろ相手は石黒邦宏さんなんだから当然といえば、そうなんだけれど。

といっても知らない人は誰のことだまったくかわからないだろうし、知っている人なら「さっすが」とうなずくだけなのかもしれない。知る人ぞ知る、石黒さんこそは日本が誇る二大天才プログラマの一人である。ちなみに、もう一人はrubyを開発したまつもとひろゆき氏、だと個人的に思っている。

話を戻す。石黒氏である。彼のどこがすごいのか。齢47にしてすでに、その人生は伝説に彩られている。頭角を現したのは学生時代、北海道大学で農学を専攻しながら早くも、プログラミングの天才との異名を取っていたのだ。

やがて若くしてシリコンバレーに行くときのセリフがすごい。「オレが教えてやるんだって気持ちで、僕はシリコンバレーに来ましたからね」である。いきがっていたわけではないのだ。そう言ってもおかしくないだけの負荷を自分に課していたのだから。

何しろ石黒氏は、10年間連続で10万行のプログラムを書き続けている。残念ながら筆者はプログラムを書いたことがない。だから、一行プログラムを書くことがどれだけ大変な作業なのかを実感として理解できない。

しかし、こうやって単純に文字を書くこととプログラムを書くことを比べたとき、仮にプログラムの方が100倍大変だったとしよう(実際に、こんな駄文をだらだら書き連ねることと、緻密なアルゴリズムに裏付けられたプログラムをコツコツ書いていくことの違いは、それ以上なのだと推察するけれど)。

とすれば文章換算でトータル年間1000万行に相当する。一月あたり90万行、一日に換算すれば3万行である。仮にエディターの左右幅を33文字に設定しているこのブログなら、どうなるか。

それがどれだけすごいことかは、ここまでの行数がわずかに33行でしかないことから想像がつくだろう。

そのウルトラマン石黒氏が開発した携帯電話向けブラウザーが、どれほどとんでもない性能を秘めているのか。今のところまだ試しようがないのだが、すごいことだけは決まっている。

ちなみに石黒氏は自分の仕事の理想を「ほかの技術者から畏敬を込めてアーキテクトと呼ばれる(日経産業新聞2010年2月2日付7面)」ことに求めている。己が一生をかけるに値すると思える仕事になら、そこまで自分の時間(=人生とほぼ同義語ではないか)を賭ける。

そんな仕事と出会える人は、幸いなり。というか、それぐらいの思いを込め、誇りを持って、自分の仕事に取り組むことこそが大切なんじゃないだろうか。