意匠権

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ドコモ、ソフトバンク「821T」製造/販売差止で仮処分申請(ケータイwatch記事より)

NTTドコモと富士通は、ソフトバンクモバイルが販売する東芝製携帯電話「かんたん携帯 SoftBank 821Tの製造、販売の差し止めを求め、東京地方裁判所に仮処分命令の申し立てを行なった。不正競争防止法に基づく申請となる。

とのことですが、私が興味を持っているのはどういう点でドコモがソフトバンクに喧嘩を売るのかというところ.
基本的にどちらも意匠登録(デザインの特許のようなもの)をしているでしょうけど、全体的なデザインとしては意匠法上は過去の商品と類似ととられてどちらも「新規性なし」となる、若しくは権利範囲が極端に小さくなってどちらも「新規のデザイン」となって類似性はない、のどちらかになる確率がかなり高いでしょう.部分意匠で引っかけるの可能性もありますが、ドコモは意匠法じゃなくて不正競争防止法で訴えています.

これは以前にソーテックがiMacのパチモン(写真1写真2)を出したときに訴えた法律で、簡単に言うと「(似ているので)ユーザーが混同しやすい」というのが訴訟のポイントになります.

この辺をどう論理構成したのか解りませんが、個人的にはドコモの勝算はきわめて低いと考えています.基本的にはドコモの商品が、過去にドコモや他社で販売されている商品に比べてこの「らくらくホン」に著しい新規性があり、それがソフトバンクの「かんたん携帯」にも模倣されているというのを証明しないといけないと思いますが、難しいところだと思います.
多分ドコモは単なる嫌がらせではなく(それをすると泥仕合になります)勝算があって訴えをおこしたと思うので、どのポイントを突いてくるかは興味のあるところです.

他の国での意匠法がどういう運用をされているかは良く知りませんが、日本の国内に於いてこういう場合に権利を保護する意匠法は経験上の感覚では実際のところうまく機能しません.
(以前に私のデザインにかなり似た商品を他社で出されたけど、意匠法では無理との判断が社内法務部で出て泣き寝入りしたことがありました.その時は不正競争防止法の使い方も知りませんでした.)
もし効果的に意匠法を使おうと思うと、色々と網を広げて権利確保せねばならず、その為のテクニックも必要になり中小企業では手の出にくくなりますし、大企業でもよほど主軸事業でない限り担当者が忙しいし費用対効果の観点でそこまで権利確保出来ません.
(以前いた会社でもほとんど気休めで意匠登録していました)

今後国際的に知財確保や権利行使の方法が問われると思うので、こういう訴えの行方は気になりますし、権利確保の方法論も確立して欲しいと思いますが、日本の司法は「目に見えない権利」の判断がオイオイと思うのも少なくなく、別の意味で心配なところでもあります.