Blackburns POD+PAN アルミ無水調理鍋
南海トラフ巨大地震 朝日新聞は
- 2013/03/19 08:00
- 投稿者: kammera
- 表示回数 1,865
南海トラフ巨大地震の記事で朝日新聞ではまた違った視点での
記事になっています。
物流寸断・断水 問われる減災への備え 南海トラフ地震
天白川の流域に広がる名古屋市の南区(右)と緑区(左)の工場や住宅街。奥は名古屋港=18日午前、朝日新聞社ヘリから、金子淳撮影 |
経済損失220兆円超、断水3440万人、道路被害4万カ所以上――。南海トラフ巨大地震をめぐって国の有識者会議が18日に公表した被害想定は、太平洋沿岸に人口やインフラが集中するリスクを改めて浮き彫りにした。最悪クラスの地震にどのように備えるのか。「減災」のあり方が問われている。
あなたの街の被害予測は「仕事どころじゃない。正直、まだ現実感もない」
名古屋市北区の中堅自動車部品メーカー「オプコ」。尾崎浩一社長(49)が言葉をのみ込んだ。
膨大な経済被害。なかでも30兆7千億円という最悪の数字を突きつけられた愛知県は、日本一のモノづくり県だ。メーカーの生産拠点が集中し、道路・鉄道の大動脈が東西を結ぶ。
東海地震が懸念される中、尾崎さんは5年前、津波の影響が少ない内陸の小牧市内に新工場を造った。約1トンの金型が地震で倒れないよう棚を工夫し、社員の防災訓練も重ねてきた。しかし、今回の想定のように物流網が寸断されては材料が不足し、操業は即座に止まる。
想定では、県内だけで4300カ所の道路が建物の倒壊や浸水、陥没などの被害を受ける。東名・新東名の高速道も被災や点検のため当分使えない。鉄道も、東海道新幹線は1週間後はまだ不通。在来線は5割復旧するのに1カ月かかる。
家族で自動車部品の修理販売業を営む名古屋市南区の今村光夫さん(68)も、心配なのは道路インフラだ。「工場が被災を免れても、部品が入らなければ」。取引先は大手自動車メーカー。車種や部品の種類も多様化し、自社に在庫を抱えない工場も少なくない。
隣の静岡県。想定では地震直後、上下水道と電気の約9割が止まる。県民の3人に1人に当たる120万人は1カ月先も避難生活を強いられる。「復旧のための人も物もやって来ないだろう。災害の長期化が心配だ」。岩田孝仁・県危機報道監は懸念する。
東海地震説が発表されて30年以上。地震防災の先進県といわれる同県はこれまで3次にわたる被害想定を独自に示し、防災対策を進めてきた。しかし、東南海、南海地震などが同時発生する被害は想定してこなかった。最大16メートルの津波が想定された浜松市の防災担当者も「他県から支援を望むのは難しい」とみる。
首都圏でも建物の倒壊などによる経済損失は東京、神奈川、千葉の3都県だけで計約2兆円にのぼる。
「普段からのご近所付き合いが大切」と東京都港区のJR田町駅に近い大型オフィスビル所有会社の社員青柳理郎(りお)さん(49)は言う。東日本大震災後、隣接するホテル、芝浦工大とともにつくった防災組織の副会長。3者合同の防災訓練もしてきた。「できることからやっていくしかない。恐れているだけでは何も始まらない」
◇
巨大地震が平日の西日本を襲った。マグニチュード9・1、最大震度7。和歌山県に2分、高知県沿岸には3分で津波が到達し、大阪府内各地で火災が発生――。想定を基に、被害額24兆円とされた大阪府を中心に、近畿地方の被災の様子を朝日新聞が予測した。
大阪市中心部。インターネットも電話も不通で、NTTの災害用伝言ダイヤル(171)は何とかつながった。新幹線・在来線は全面停止なのに、主要駅には人が続々と押し寄せる。帰宅困難者は近畿全体で270万人にのぼる。
停電のため真っ暗な道を、大勢の人が我が家へと歩く。大阪府内の小中学校はアルファ化米や乾パンを備蓄しているが、手に入らないかもしれない。避難所で生活する人の1日分(2食)しかないからだ。
あちこちのビルではエレベーターが緊急停止し、大阪府で約3600人、兵庫県で約1700人(正午発生の場合)が閉じ込められた。大阪府内で発生した火災による被害は、最終的に26万棟に達した。
永松伸吾・関西大准教授(災害経済学)は「これほどの巨大災害だと、買い占めによる物資不足など社会的混乱でも被害が拡大する。家の耐震化や食糧備蓄など、あきらめないで基礎的な防災対策を進めるべきだ」と指摘する。
九州では、太平洋に面した宮崎県の被害額が4兆8千億円で最も多い。避難者は最多で35万人だ。
宮崎市南部の野島地区の自治会長、河野武嗣さん(60)は昨年、宮城県石巻市の被災者に話を聞き、「救援が来るまでどれだけの命を守れるか」が一番大事だと考えるようになり、1月に標高25メートルにある簡易水道小屋を改修した。近く全45世帯の3日分の食料を備蓄する。「地震、津波は必ず来るが、公的支援はすぐには来ない。ならばやることは分かりきっている」
◇
■自治体間の支え合いには限界
静岡県の駿河湾から九州東部沖にかけて延びる海底のくぼみ「南海トラフ」。長さが約700キロに及ぶトラフの周辺が同時にずれ動けば、太平洋沿岸の広い範囲が揺れと大津波に見舞われる。複数の自治体に「相互援助協定」を結ぶ動きが広がるが、被害の様相が多岐にわたるために連携できない可能性もある。
総務省消防庁によると、災害時に職員の派遣や食料・物資の供給、避難住民の受け入れを定めた援助協定を結んでいるのは全自治体の95%にあたる1645自治体。だが、県境を越えた市町村間の締結は959自治体にとどまっている。
最大で震度7の揺れが想定される愛知県知立(ちりゅう)市は2月、日本海側の富山県魚津市と協定を結んだ。南海トラフ巨大地震が起きると、近隣の自治体も被災する恐れがある。こうしたリスクに備えた対応だったが、18日に発表された被害想定では道路や鉄道が寸断され、遠隔地からの人や物資の輸送が難しくなる。連携を探る自治体関係者からも「実際にどこまで機能するかは不透明」との声が漏れる。
消火や救助活動の連携にも課題が山積みだ。阪神大震災後、都道府県単位で活動する「緊急消防援助隊」ができ、原則として被災地の近隣から順に1次応援、2次応援が向かうことになった。ところが、東日本大震災では足元が被災した千葉県と青森県の部隊は、すぐに福島県や岩手県に向かえなかった。
南海トラフ巨大地震でも同じ事態になる可能性が高いが、代替策は見つかっていない。消防庁の担当者は「今回の想定をもとに対策を検討する必要がある」と話す。(高橋淳)