意味的価値

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休日にじっくり読めてなかった少し古い新聞を読み返しました。
その中に「ものづくり」に関する興味深いコラムがありました。
5/28の日経朝刊の「経済教室」欄。
タイトルは「ものづくり再生の視点・顧客が喜ぶ『価値づくり』を」。
筆者は一橋大学教授の延岡健太郎氏。 延岡氏は現在の日本の製造業、特に電子機器分野の苦境の原因の分析を「価値づくり」という視点から行っています。
特に興味深かったのは真の顧客価値に関する考察。

顧客価値には、客観的に評価できる機能や仕様に関する「機能的価値」と、
顧客が主観的に価値を意味づける「意味的価値」がある。

機能的価値はスペックにより決定するが、意味的価値は商品機能だけでは決まらず、顧客が共創する価値とのこと。

近年、技術の均等化が進み、単純機能での差別化は困難になり(いわゆるコモディティー化)、
機能的価値により利益の産み出すことが難しくなりました。
そのため意味的価値が価値づくりの鍵を握るとのこと。
過去の具体例として、技術仕様が大きく優れたソニーのPS3に対し、
意味的価値で圧勝を収めた任天堂のWiiを挙げられています。
そして意味的価値の創造が難しいとされる電子機器の分野で、その常識を覆したのが米アップルだとしています。

さらに延岡氏は意味的価値の重要性は消費財に限ったことではなく、生産財においても同様だ、としています。
製造関連機器で高収益を誇るキーエンスやディスコを例に挙げ、
顧客企業の使用状況を顧客以上に勉強し、顧客の利益がより高まる商品を提案する姿勢が利益の源泉だ、としています。


一品一様の検査機や計測器を作っている弊社のような企業にとっても、
コモディティー化の波とは無縁ではありません。
そのためにも顧客にさらに寄り添う姿勢が重要であり、
それを再認識するうえでも、「意味的価値」という言葉が大きな意味を持つと思います。