メイキングof『首長パンチ』4 本はこうしてできあがった

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書くことを渋っていた市長が、あるひと言をキッカケに
急に態度を変えました。
そのキッカケとは何だったのでしょうか。

市長がとうとう書く気になってくれた


詳細は、市長のブログにあるとおりで、市長の条件に従って、せっせと取材に回りはじめた。この間にお会いしたのはざっと10人ほど。武雄市の関係者、医師会の先生、池友会トップ、そして高槻市の元職員の方に関西大学の関係者、さらには箕面市長などだ。


話を聞いたら、速攻でテープ起こしをして、メモと録音データを市長に届けるのが、こちらの役目である。メモは実際には、あまり参考にしてもらえなかったみたいだけれど(泣)。


でも、その方が良かったのだと思う。市長が、自分の中からわき出る思いや考え、そして記憶を頼りに書かれた方が、絶対によいものになる。そう思っていたし、結果的にもそうなった。初稿を読んだ講談社の加藤部長も「これは、おもしろい。文章もいい」とほめておられた。ちなみに、この加藤部長は原稿チェックの厳しいことで有名な方、初稿で「いい」なんておっしゃることはまずないそうだ。


ただ、原稿に関しては一つだけ、問題があった。多いのである。市長が思いの丈を書き込んでくれた結果、予定の枚数の1.5倍ぐらいになっていた。これを絞り込まなければならない。削るのは編集の仕事である。削った原稿を市長に戻すと、再び新たにどこかが追加されて返ってくる。


「いや、書きたいことが次から次からどんどん出てくるから、あとはよろしくね~」と、このあたりまで来ると、いつもの樋渡節に戻っている。こっちとしても削りたくはないのだ、どれもこれもおもしろいエピソードばかりだから。とはいえ、加藤部長からは「ちゃんと予定枚数まで刈り込まないと、本は出しません」と厳命されている。ここがきつかった。


しかし、充実した中身を、さらにとがった内容にするための削り込みである。これは編集者冥利に尽きる仕事と言っていい。苦吟しながらも、どこか楽しい。そんなこんなを経て、本自体はできあがっていった。


しかし本は「作って半分、売って半分」が加藤部長の口癖である。いくら良い本ができたと言っても、それだけで喜んでいたのでは編集のプロとは言えない。どうやって売っていくのか。そこを考えよ、との指示が出たのだ。


幸い、市長は極めて顔の広い方である。東京にも知り合いがたくさんおられる。現職の市長さんや知事さんで仲の良い方もいる。マスコミ関係者にも顔が売れている。このあたりのネットワークを使ってもらえば、そこそこプロモーションは簡単にいくんじゃないか。と安易に考えていたら、加藤部長から雷を落とされた。


「誰に、何を頼んで、いつまでにやってもらうんだ! もう本はできあがりが見えているのに、売り方がまったく決まってないじゃないか。それを考えるのが、編集の仕事だろう。このままじゃ、売れないぞ。しっかりしろ(ばかもの!)」


甘かったのである。


それからまた、市長に相談し、さらにはお願いもして、例えば帯を誰に頼もうかとか、どんなスケジュールで、どこに話を持っていこうとか、書店ではどう扱ってもらうのが良いか等々、喧々がくがくのやり取りをした。


ここで一つ、ものすごくラッキーだったのが、樋渡市長が日本ツイッター学会の会長をされていること。市長のフォロワーは9000人ほどで、人数だけを見ると、特別多い方ではない。が、フォロワーの方には、各方面に影響力のある方が揃っている。これが使える。


しかも、日本ツイッター学会の総会を今年の夏、急遽開いたときには、ツイッター関連の著名人が集まったこと、さらには武雄市役所がほとんどの職員にツイッターアカウントを取ってもらって、市役所を挙げてツイッターを導入したことが、マスコミの注目するところとなっていた。


今や自治体でツイッターと言えば「武雄市」であり「樋渡啓祐」なのだ。これで行こうと。


「ほんとに、そんなツイッターなんかで売れるのか?」と加藤部長は、半信半疑だったけれど、市長のツイッタータイムラインを見ている限り、反応は上々だ。最後まで揉めた帯も、最終的には『首長パンチ』のタイトル通り、パンチに効いたものになった。


著者の樋渡啓祐市長、講談社の加藤部長、編集構成に関わったスタッフ一同の力作が、今日、書店に並ぶ。ぜひ、手にとって見ていただきたい。読みやすくて、おもしろくて、深みのある中身。自信を持って、世に送り出す一冊になった。


『首長パンチ』樋渡啓祐著/講談社


よろしくお願いします。