12月21日の数字:年間アイデア総数2万件、小林製薬の仕組みと仕掛け

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アイデア勝負。だからアイデアを出せ。
というだけでは、なかなか良いアイデアは生まれないのですが。
では、どうすればアイデアがたくさん出てくるのでしょうか。

小林製薬では「経理や広報なども含めたグループの全従業員約2300人が新製品のアイデアを出す。アイデアの総数は年間1万5000〜2万件に達する(日経産業新聞2009年11月26日付22面)」

個人的には「ナイシトール」が最近のツボ作だ。そもそもネーミングがすばらしいのが、小林製薬の特長だろう。このナイシトールとは脂肪の分解・燃焼を促し、肥満症の改善に効果がある薬のこと。つまり体内脂肪を取るから、ナイシ・トールなのだ。

他にもある。耳鳴りを改善する薬「ナリピタン」。泡で傷口を消毒するのが「キズアワワ」、蓄膿症を改善する「チクナイン」。コピーライターの端くれとしては「この会社、どこまで冗談でどこまで本気かわからん、ということは、めちゃくちゃよく計算されたネーミングじゃないか」と敬服するばかりだ。

少なくとも社名に「製薬」とついているのだ。新製品開発は研究所が受け持つのだろうと思いきや、まったく違う。新製品開発は、全社一丸となって取り組むのである。だからこそのおもしろ(失礼!)素敵な製品が出てくる。

アイデアを出せ、というのは簡単だが、それだけでアイデアがわき出てくるなら誰も苦労はしない。アイデアを引き出すために地道に、顧客の声を聞いたり、顧客に日記を書いてもらう「日記調査」などの下準備にも抜かりがないのだ。

その上で簡単にアイデアを出せるような仕組みも整えられている。それが「社員に配備されたパソコンの画面に表示されているアイデア提案と呼ばれるアイコンだ(前掲紙)」。これをクリックすれば、思いついたアイデアを簡単に提案できるようになっている。

仕掛けと仕組みである。

どんどんアイデアを提案するように、とかけ声だけかけたとしても、それだけではダメ。仮に何かおもしろいアイデアを思いついたとしても、それを提案するためには書面にまとめないとと思っただけで、大きなハードルができてしまう。

アイデアは思いついたときの勢いで人に伝えるなり、メモに書き残すことが必要。そこから先は、みんなで検討すればいいのだ。要するに小林製薬では、誰もが簡単にオンラインでブレストを立ち上げられるような仕組みが用意されていると言っていいだろう。

だから、どんどんアイデアが出てくる。仮に年間2万件アイデアが出たとして、その中の0.1%が商品化されたらどうなるか。毎年20もの新製品が出てくることになる。その中の2割がヒットすればいいのだ。

とにかくアイデアは数が大切。数を出すために、どんな仕組みと仕掛けを用意できるかが、マネジメントの考えどころである。御社には、どんな仕組みと仕掛けがあるだろうか。