12月17日の数字:IT投資0.1%減の罠

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新聞記事を何となく読んで真に受けてしまうと
とんでもない間違いを犯す危険がある。
その典型的な例をご紹介します。

2010年の国内IT市場についての予測。「企業のIT投資抑制が続き、国内のIT市場規模は09年見込み比0.1%減と見込む(日経産業新聞2009年12月14日付7面)」

この記事を読んで「ほう、そうなのか。みんな、IT投資を抑制するのだな。では我が社も抑えることにしよう」などと思う経営者は、まさかいないと思うが、さて。万が一、そう考えるマネジャーが出たりすれば、この記事は明らかにミスリードを招くことになる。

なぜなら、総額としての市場規模は0.1%マイナスかもしれないが、実態は確実に異なるからだ。例えるなら光ファイバーで5000円だったネット接続コストが2500円になるとどうなるか。

光ファイバーに変える人は、当然増えるだろう。しかし表面上の市場規模自体はユーザー数が2倍に増えない限り、前年対比増とはならない。ユーザー数は大幅に増えるが、市場規模としてみたときには増えていないように見える。数字のパラドクスである。

これがIT市場の特長だ。

来年、間違いないトレンドがクラウドコンピューティング。これがIT投資コストを劇的に引き下げる。その下がり方は半値八掛けといったレベルをさえ遙かに超える。少なくとも一ケタ、場合によっては二ケタのコストダウンとなるのだ。

例えばこんなサービスがある。社員が業務時間内にPCをどのように使っているのかは、経営者なら気になるところだろう。仕事をしているふりをして遊んでいるぐらいならまだしも、危ないサイトにアクセスしてウイルスに感染したり、あるいは故意に情報を漏洩されたりするリスクもある。

そこでどのキーを叩いてどんなコマンドを出したのかはもちろん、マウスの動きまですべてのログを取って解析してくれる。クラウドサービスである。このサービスをPC一台当たり月200円程度で使うことができる。少し前から比べれば、サービス価格は二ケタぐらい下がっている。

これがクラウドコンピューティングの威力だ。要するにこうしたサービスをいかに使いこなせるかで、IT投資の費用対効果は劇的に変わってくる。それでもトータルでの市場規模が0.1%減という予測数字の意味を、決して読み違えてはいけない。