12月10日の数字:牛丼並盛り280円

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筆者が密かに、デフレバロメーターとして注目している牛丼の値段が、遂に下がりました。
この先、日本は真性デフレへと突入していくのでしょうか。

すき家が牛丼を値下げした。並盛り一杯280円、これまでが330円だったから50円の値下げになる。率にして約15%、大盛りも同じ50円の値下げだ(日経MJ新聞2009年12月9日付15面より)。

消費者としては、何と言っても値下げはありがたいことに違いない。特に今のように景気が悪く、すなわち手取りが減っている状況ではいろいろなモノの値段が下がることは恩恵以外の何ものでもない。何しろ今やジーパンを900円ぐらいで買える世の中になっているのだ。一体、今は昭和何年なんですか、と言いたくなる。

が、それじゃいかん、という話が片側にある。デフレスパイラルという理屈がある。モノの値段が下がれば、企業収益が減る、その結果、労働者の給料が下がり、モノが売れなくなり、モノの値段が下がり……以下同様。これを繰り返していくと、どうなるのかという話だ。

国内で売れないのなら、海外で売ればいいじゃないかという話も、もちろんある。が、それも厳しい。為替である。円高ということは、輸出した場合の価格競争力が落ちる。すなわち海外では売りにくくなる。

しかも中国ではいま「ジャパンフリー」が人気なのだという。どういうことかといえば、例えば新しく家を買う場合、家の中に日本製品が一つもない状態をジャパンフリーと言うそうだ(週刊現代2009年12月19日号49ページ)。

彼らはおそらくこれまでも、決して心から日本製品を求めていたわけではないのだ。ただ他にコストパフォーマンスの取れた製品がないから仕方なく買っていただけ。自国製品の質が上がってくれば、喜んでそちらを買う。本心はそうなのだろう。ということで今後は中国でも買ってもらえなくなる。

中国に続く国々では、例えばベトナムなどがその一番手となるのだろうが、日本製よりはるかにコストパフォーマンスに優れた中国製品が受け入れられることになるのだろう。何もかもがという話では当然無いにしてもだ。

方やアメリカはドル安容認で輸入ではなく輸出での経済立て直しを企んでいる。まさに日本は八方ふさがりというわけだ。そうしたマクロ状況がある中で、牛丼各社は国内で戦っていかなければならない。そこで値下げで勝負する。

円高だから、原材料となる海外産牛肉をこれまでより安く仕入れることはできるだろう。仮に為替レートが1ドル95円程度から85円程度に下がるなら、牛肉の仕入れコストは10%程度下がることになる。これを活かして利益を若干削ってでもシェアを取りに行くという価格戦略なのだろう。

今回の値下げにより吉野家とは100円の開きが出ることになった。これが結果的にどう出るのか。なぜ吉野家が追随しないのか、あるいはできないのかというところが不思議ではあるが、さて。

仮に吉野家に閑古鳥が鳴くことになり、すき家がダントツの勝ち組になりでもしたら、そのときこそデフレの深刻化が後戻りできないレベルに達したという証なのかもしれない。