9月1日の数字:5年間で3割、1200工場を閉鎖

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セメント業界が大規模な生産設備廃棄に乗り出す。
その背景に浮かび上がってくるのは、今回の政権交代がもたらす影響ではないか。

「全国生コンクリート協同組合連合会は2015年度までに全国3900工場3割を削減する自主行動計画をまとめた。建設需要の長期低迷により生コン需要はピークに比べて半減し、3割以上の設備が過剰だ(日経産業新聞2009年8月31日付12面)」

設備が3割過剰だから、その分を廃棄する。極めて合理的な判断ではあるが、これが一筋縄ではいかない。セメント業界は中小企業の集まりだから、工場廃棄すなわち廃業に直結する。しかも参入コストよりも退出コストの方が高くつく。そして業界構造として事業を継続さえしていれば、仕事を回してもらえる仕組みができている。

そんな状況で誰がやめるだろうか。という背景や状況はすべてわかった上で、それでも3割閉鎖を打ち出した理由に注目すべきだろう。今回の計画がいつ立てられたのかは知らない。しかし、全国生コンクリート協同組合連合会に知恵者がおられたなら、マーケティングを考えるときに極めて重要な要素であるマクロ分析をしていたはずだ。

一般的にはPEST分析と呼ばれる。自社の事業に影響を与えるマクロ環境を分析するのだ。具体的にはPolitics(政権交代、法改正、外交、税制など)、Economics(景気動向、貿易など)、Society(文化、人口、教育など)、Technology(新技術など)。

今回の計画立案者は、早い段階で政権交代を読んでいたのではないか。自民党の退潮ぶりは誰の目にも明らかではあった。だから、仮に自民党政権が民主党政権に取って代わられたときに、何がどう変化するのかを事前シミュレートしていた可能性がある。もし、今回の立案者氏が相当の先見の明をお持ちだったなら、おそらくは福田さんが首相を投げ出した時点で、さまざまなシナリオを作り始めたはずだ。

そのとき浮かんだ自民から民主への流れは、麻生首相の登場によってより確度が高まった。そして麻生政権の犯した数々の失態を見ていると、シナリオの実現可能性は高まってきた。民主党が政権を取れば、事業環境は決定的に変わる。そう読んでの削減計画なのだ。

ことは何もセメント業界だけに限った話ではない。民主党がこの先、どんな政策を打ってくるのか。今からでも遅くはない、というか今だからこそ同党のマニフェストをしっかり読んで、ほぼ確実に読める未来像を掴んでおくべきだ。