8月27日の数字:自動車のリナックス2013年・10万台

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自動車業界のリナックスとは、一体何を意味するのか。
慶応大学発のベンチャーが、業界にパラダイムシフトを起こします。

リナックスといえば、オープンソースOSである。パソコンからスパコンまで幅広い用途に使われており、ある意味マイクロソフトの目の上のたんこぶ的存在でもある。日本でこそ使われていないが、海外ではここ最近流行りのネットブック用OSとして一般的に使われてもいる。

とまあパソコンにそこそこ詳しい人なら、これぐらいのことはわかっているはずだ。が、EV版「リナックス」』登場(日経産業新聞2009年8月26日付13面)と言われると、それは一体何のことかと注目を集めることになる。

まず、モノはEV、つまり電気自動車である。これまで自動車産業と言えば、そう簡単には新規参入などできない業界だった。なぜなら精密なパーツをくみ上げて作るエンジン、駆動系などはノウハウのかたまりである。そのノウハウのない異業種からの参入などはまず不可能だったのだ。

このある意味閉ざされた世界に殴り込みをかけるのが慶応大学発のベンチャー「シムドライブ」である。同社はインホイールモーターを売り物にEV市場に参入する。これは「駆動モーターを車輪に直接組み込む。車体に積む大型モーターの力で走る従来のEVと違って、自由な車体デザインの設計が可能だ。さらに駆動力を効率よく車輪に伝達できるため『充電1回当たりの走行距離を最大2倍伸ばせる』利点もあるという(前掲紙)」

しかも、その根幹となる駆動技術を「オープンソース」として割安で望む企業に提供する。これにより異業種からの参入を促すのだ。その狙いは自動車業界の活性化である。考えてみれば、自動車業界はアメリカのGM、フォード、クライスラーに始まり、日本ならトヨタ、日産、ホンダとプレイヤーが固定されていた。それ以外のメーカーが出てくることをこれまでは誰も考えていなかった。

もちろん、それでもトヨタは激烈なまでのカイゼンを繰り返し、コストパフォーマンス向上にしのぎを削ってきた。しかしあくまでそれはプレイヤーが固定された世界でのことである。仮に新規参入がどんどん起こるとどうなるのか。少なくともトヨタでさえ刺激は受けるだろう。

今回のキーパーソン・慶応大学清水教授の狙いもそこにある。「すでに中国や韓国、欧州の自動車関連企業からも問い合わせを受けているほか、家電やエネルギー関連など異業種の参入も可能性は十分にあるという(前掲紙)」。

産業構造のパラダイムシフトは、まず自動車業界で起こる。そんな可能性が極めて高くなってきた。