8月6日の数字:熱交換機の性能を100倍アップした岸和田の企業

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従来と同じ性能を100分の1の大きさで実現する。
とんでもないことを実現した企業が岸和田にありました。

大阪岸和田市にある機械部品メーカー・CKU社が開発した熱交換機は、従来の100分の1の大きさで同じ性能を持つ(日経産業新聞2009年8月4日)。しかも価格も数千円レベルに抑えられているという。

これまでの100分の1の大きさで同じ性能を持つということは、逆に考えれば従来の100倍の性能を持つといっていいわけだ。今の性能を一挙に100倍にパワーアップする。そんなことができるのだろうか。

確かに最先端のテクノロジーを使えば不可能ではないのだろう。しかし、その場合にはたいていコストの問題が絡んでくる。性能は飛躍的にアップするものの、コストも同じようにアップするため結果的に実用レベルでは使えない技術に終わる。そんなケースが多い。

しかし、今回のケースは違う。「同社では家電向けなど小型の場合は価格を二千円以下に抑えられるとしている(前掲紙)」という。このコストパフォーマンスとの高さは、ほとんど魔法と言ってもよいのではではないか。

いや、安易にマジックで片付けてしまっては開発に至る同社の苦労に失礼になるだろう。どうすればコストを抑えながら、画期的な性能を出すことができるか。この課題にど真剣に取り組んだ同社が見つけた答え、それは安価な注射針を加工してパーツに使うことだった。

そもそもの問題意識は「燃料電池では大きさの3分の1を熱交換機が占めている(前掲紙)」ことであり、これを小さくできればビジネスチャンスがあると見たわけだ。そこで発想の枠を思い切りストレッチした。

例えば『サイズをこれまでの100分の1にする』といった途方もない目標を設定することによって、従来の思考の枠組みをぶっ壊したのだ。同じやり方で有名な話が松下の「コスト削減を狙うなら3%ではなく3割を狙え」だろう。

一ケタ目標レベルを上げることで、まず従来の思考パターンの延長線上では課題解決は不可能になる。だから思考パターンを変えることを求められる。ところがCKU社が設定したのは、二ケタ上の目標だった。こうした目標設定がおそらくは、必死さを増したことは想像に難くない。

だから大阪・岸和田の企業でありながら遙か遠く離れた筑波大学が発表した理論を探しだし、さらには既存の注射針を活用するといったすばらしいアイデアも閃いたのだろう。二ケタ上の目標設定の威力、この成功事例から学ぶべきポイントだ。