カウンセリングルームって、利用しにくいっすよ

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私が産業カウンセラーとして非常勤で入らせていただいている某企業での話。



廊下でA君と出くわした。
先日、体調不良が重なって、医者に行ったがどこも特に悪いところは無いと言われ、
心療内科に行くべきか悩んでいるところに、私とたまたま話をする機会があって、
気が済むなら心療内科に行っといでよとアドバイスしたばかり。
でも、見た限りでは、身体に不調を覚えるほどには精神的に追い詰められているようには思えない。

「心療内科には行った?」
と、私。
「いや、まだなんす。忙しくって。」
「心療内科で診てもらうのも大事だけど、その前に生活のリズムを整えたほうがいいよ。」
先日、自販機の前で立ち話した程度だが、どう考えても睡眠時間が短すぎる。
そのために、就職して以来、朝食を摂った事がないんだそうだ。
生活のリズムが崩れているのは、職場でのストレス、
それも、上司とのコミュニケーションのまずさが原因で、
なおかつ、彼自身と言うよりは、上司のコミュニケーション能力に問題があるような
気もしているのだが。
他でもちらりと聞いてみたら、彼の上司は、褒め下手。
さらに、説明下手。
現場志向の人にありがちなパターンだ。
今時の若者には、それは辛かろう。
社会人として立派に成長していく過程の一つとして、そういう上司と付き合うのも大事だが、
それがために、せっかくの優秀な戦力がつぶれそうになっているのは、さすがに見るに忍びない。
人事部を通して、部下を褒めたり説明したりする事の大事さと、そのスキル取得について
勧奨していただくのがいいのだが、できれば、もっと具体的に状況を聞いておきたい。
かと言って、自販機の前や、廊下での立ち話でできるような内容の話ではない。
「一度、カウンセリングルームに遊びにおいでよ。」
軽く勧めてみた。
「いや、でも、それは。」
「忙しいの?」
「いや、そうじゃなくって、カウンセリングルームって、行きにくいっすよ。」
「おいおい、心療内科には行けて、カウンセリングルームには来れないの?」
「だって、社内だし、業務時間内の事なんで、上司に了解をもらわないといけないし。」

なるほどなぁ、確かになぁ。
カウンセリングルームってところは、業務に確実に支障が出るほどにまで追い詰められて、
やっと来て貰えるような場所なのだ。
しかし、そういう人って、全体の5パーセント。
残りの95パーセントは、彼のようになんだかんだと問題を抱えつつも、
仕事をこなしている。

しかし、せっかくの機会なんだ。
彼にも上司とのコミュニケーションについて、もう一度振り返る事をして欲しいし、
彼の上司には、部下との付き合い方を見直して欲しい。

彼と同世代の人を集めてのコミュニケーションセミナーとか、
彼の上司と同世代を集めての褒める練習とか、
一人では来談しにくいカウンセリングルームでも、
そういうグループディスカッションの場にしてしまえば、
同じテーマを持った人同士で利用してもらえるのではないだろうかと、
さっそく人事部にセミナー開催を掛け合いに行った私でした。