第19回BMBインタビュー[有限会社加賀スプリング製作所]

有限会社加賀スプリング製作所

受注の落ち込みからIT経営に活路を見いだし、今では大阪のバネ☆マスターとして、独自のビジネスモデルを手中にされた、有限会社加賀スプリングの代表 野崎武士さんに、お話をうかがいました。
創業はいつ頃ですか?

昭和31年に父親が創業しまして、その頃はバネも一個一個手で巻いて、昔ながらの作り方をしてました。その後、大阪のバネ産業は自然淘汰されて、自動車関係の部品集積が進む名古屋へ集中していきました。

昭和53年には、文房具関係の仕事をほぼメイン(約80%)にやっていました。それから10年程は安定していましたが、ご多分に漏れずバネも海外生産となり、仕事量は1/4程度に激減しました。

加賀スプリング製作所加賀スプリング製作所

対策はどうされたんでしょう。

その頃から「インターネットで集客できないかな?」と考えだして・・・、産創館で「ネット活用実践塾」を受講、その時の講師が現在の株式会社創の村上さんでした。
その講座では集客・メール管理・情報公開等を学び、それらを軸にしたホームページ作りをしました。

同時に村上氏が主宰されている「e製造業の会」に入会して、会員どうしでネット情報を共有し、勉強を始めました。

その効果はいかがでしたか?

現在、リアル(従来からの顧客)とWeb(ネット顧客)の売り上げ比率は50対50です。ネット顧客は1,000件を超えています。一日に問合せや見積もりは2.5件ぐらい入ります。

Webでは単品からの受注が多く、一つ一つは手間が掛かりますので、新たな標準原価計算を用いた適正な売価で販売しています。

中小企業の生き残り対策として、多品種少量生産に移行されたということですね。


どんなバネでも一個からでも作ります。バネは種類が多く、材質、径の太さ、末端形状などによってもバリエーションは無限ですから、実際のバネ業界は分業が高度に進んでいます。

Webからの受注は特に種類が多く、弊社が長年に渡って築いてきたネットワークを活かして、バネの企画・設計・製造・納期管理を効率よく回して行くのが主な仕事になってきています。見積実績は1300社以上あり、弊社ネットワークでシェアしています。

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例えばどんな依頼が舞い込んでくるのでしょう。

先日依頼のあったライターのバネは、10本1万円の仕事でした。写真をブログサイトに上げてもいいというので値引きしました。(笑)

トーレンスという50’~60’年代のスイス製のライターでして、横のボタンを緩めて押すと一発で着火される仕組みです。そこに、ねじりバネが使われています。マニアには堪えられない品だとか・・・。

古い柱時計のゼンマイバネとか、こういう骨董市場の潜在的ニーズはまだまだあると思います。
現代ならステンレスで作れますので、バネの保ちもずいぶん違うと思いますけどね。

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硬化処理もされるんですか?

時効処理硬化といって、約380度〜450度に加熱してから自然に冷ますものです。
弊社には「熱風式循環バッチ式炉」という500度まで加熱できる炉を導入しています。

自宅兼工場が住宅密集地ですので、触媒で油分を分解して有害物資を水に還元できるという、地球に優しいのが一番の選定理由でした。

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特殊なバネも扱われるとか・・・。

インコネル耐熱バネ(ニッケル基超合金の一種で、耐酸化性・耐食特性を持つ)やセラミックバネ(窒化珪素セラミックスを素材に使用)などの特殊なバネも一個から受注しています。
セラミックバネは1,000度ほどの炉のなかで、ロウ付けや圧力を掛けて金属などを焼結するときに使われます。

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顧客からの依頼の仕方は?


どんな用途でどこに使われる部品かといった情報と、写真、寸法を送っていただければ、ほぼ確実に作れます。あるいは、折れたバネを直接送ってこられる場合もあります。

専門的な顧客には、バネの特性計算ができるソフトをCGIで作ってホームページで公開・提供し、お問い合わせフォームと連動させています。以前にWebの講師をされた方が、無料の情報には人は集まってくるが、有料情報には集まってこないと言われたので、集客を考えてこういう仕組みを作りました。
おかげさまで、お客さんがどんな仕様のバネが欲しいのかと言うことが、問合せとともに分かって、その後のやり取りがスムーズに進みます。

実は、管理者モードでは、この特性計算を利用した人のIPアドレスが分かります。会社名や部署まで分かりますので、データとして活かしたいなと思った時期もありますが、今のところそういう余裕はありませんね。

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ホームページのアクセス解析はいかがですか。

圧倒的に日本ですが、中国や韓国などのアジア、米国からもあります。日系企業でしょうかね?
アクセス解析では、「バネ・スプリング」、「製造・大阪」などのビッグキーワードでの検索が多いんですが、「固有振動数」とか「グッドマン線図」とかバネの応力計算などに使われる専門用語で引っかかってくることもあります。
そういう専門的な記事をかいておくというのも必要ですし、今後は用語集に力を入れていきたいと思います。

さすがにバネ☆マスターを公言されるだけのことはありますね。今後もIT経営と職人の技を駆使してバネのオンリーワン企業を目指してください。

本日はどうもありがとうございました。


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