The BAR SOLID SHAMPOO(ザ バー ソリッド シャンプー)
第16回BMBインタビュー[(有)たくみ精密鈑金製作所]
- 2009/07/09 17:00
- 投稿者: nishimura(oidc)
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(有)たくみ精密鈑金製作所製造部長として鈑金試作に励むかたわら、異業種交流会「マテック八尾」のロボット分科会会長職を務め、子供たちにロボット教材を通じて、ものづくりの楽しさを伝える伝道師でもある鈴木謙三さんにお話を伺いました。
■まずは、御社の仕事内容をご紹介下さい
いわゆる鈑金屋ですが、非常に細かい鈑金の試作を行っている会社なんです。これは一眼レフカメラの天辺の部分でプリズム押さえの部品ですね。またカメラのシャッターのレバーとか、液晶プロジェクタのランプ押さえです。こんな細かいものをいろいろやっています。
すごく精度がうるさい部品があり、16回曲げて精度が0.05ミリを要求されています。数は少ないですが、どれだけ精度良く仕上げていくかがポイントです。
鈑金というのは、金型を起こすような大量生産品でない部品を、板材から折り曲げたり、切ったりして製品に仕上げるものです。そのため、試作などの小ロットとしてお引き受けしています。
□これらは全部試作品ですか
そうです。量産は別の会社が行います。当社は、創業時から試作専門で、1個から100個程度引く受けます。1000個という場合もありますよ。1000個くらいになると、初回ロットの量産品ということになりますね。
□試作品ですと図面はきっちりしたものが来るんでしょうか?
完成形で来ることもあれば、スケッチのようなもので来ることもありますし、こちらで形状を提案することもありますね。我々はずっと試作をやり続けているわけで、素材についてお客さんとディスカッションして、加工の方法を一緒に考えていったりすることもありますね。
例えば、元々機械加工で、削り込んで突起を出していた部品がありました。割高になるんですね。こういったものを、タレットパンチプレスや曲げ、そして貼り合わせで行うことを提案したんです。すると、価格が半分くらいになって大変喜んでいただきました。もう10年以上、月100個くらいですがずっと注文いただいています。
□なるほど、そういうのって相談してみないとわかりませんからね。
当社のパンフレットでは、「メーカーの技術開発部門の皆様へ」というようにアピールしているんですが、私たちは出来るだけ開発過程に入り込んで対応させてもらっています。そうすると、お客さんの困っているところが見えてくるんですね。そこで、我々の加工経験や知識でアドバイスさせていただいています。
当社は単に図面に基づいて加工するという姿勢ではなく、トータルに相談できる体制を整えています。作り手でもある一人ひとりが責任を持って、お客さんから性能の要求を聞くなどして打ち合わせ、価格や納期、すべてを決めます。そうすることで作り手が、お客さんのニーズを的確に理解できます。いろんな相談なんかを持ちかけられたりもします。中には、実用新案になったものもあるんですよ。
提案まで含めて相談に乗りますので、逆に仕事は楽になりますね。実際の使用条件なんかもわかってきたりすると、こちらで無理と判断されるものは変更してもらえますしね。
■BMB会員の北條さん(item-s design)ともコラボされていますね。
北條さんとはJOBカフェOSAKAでの講演で、お互い講師同士で知り合ったのが縁でした。北條さんは以前大手家電メーカーでデザインを担当されており、今のトイレの形って掃除しやすい凹凸の少ないものになっていますけども、それを最初に提案された方だということで非常に興味を持ちました。それで、出来ることは何でも協力したいと思っていたんです。
北条さんから和紙素材での時計の製作を相談され、ムーブメントと時針、分針をつなぐ部品を作成しました。こういった市場開拓的な製品って、そんなに売れないですから、最も安くなる加工をこちらで考えて設計変更もしていただいたんです。
本来何万個とか、数多く作る場合、絞り出しといってプレスで行ったりするんですが、金型代なんかが高くつきますから、少量品には向かないんですね。それを、タレパンで切り出して、バーリングで行うようにしたんです。こちらの部品も、最初は絞り出しで加工するのを想定されていたんですが、これを旋盤で削り出しで行うようにしたんです。削り出しって意外と安くつくんですよ。100でも200、500でもトータルはそれほど変わらないんです。それを背の高い絞りで行うと金型代って何十万円てしますからね。
□デザイナーさんにとっては、非常にありがたい存在ですよね
ものづくりに詳しいデザイナーさんもたくさんいらっしゃるとは思うんですが、私たちは毎日これをやっていますのでね。お互い足りない部分をサポートし合うっていうことが、本当のマッチングですから。
■マテック八尾という異業種交流会で、ロボット関連の事業をやられていますよね?
もう5年やっているんですよ。なんでこんなことをやっているかというと、中小企業って常に価格競争にさらされていますよね。それで生きていくためには新しい分野を開拓していかないとと思っていたわけです。新しい産業を興さなければって。それで、マテック八尾の幹事になり、何をしようかということで「ロボット」を言い出したんです。八尾にロボット産業を興そうと。
今となっては後づけの目的になってしまうかもしれないんですが、「市民に理解されるもの、誰でも関われるもの、特に子供たちが関われるもの」という意識はありました。そして、市に対して働きかけ、市の担当者の方と奈良高専へ相談に行ったんです。ちょうど子供向けに、夏休みのイベントをするっていうことで見学させてもらいました。「壁伝いねずみ」といって、触覚で壁を感知して動いていくロボットなんですが、1日目に子供たちにキットを作らせて、2日目に奈良高専で作成した基板に載せかえることでライントレースするロボットに変身するものだったんですが、これが八尾市でも行えたらって思ったんです。
同時期に、八尾でも国のプロジェクト(ものづくり理解促進事業)を行っていたんですが、奈良高専の講座を改良し、中学生向けの出前授業を行うことにしました。教材のロボットは、ものづくりの企業体の「マテック八尾」で作りました。
2年後には、PICマイコンを搭載させたロボットを作りました。ちょうどマテック仲間でPICマイコンをやっている会社があったんです。そして、赤外線素子を搭載して、リモコンで操作できるものに進化させました。そのロボットで、ITクラフトマンシップ事業という国の委託事業に採択され、PICのプログラミングを学ぶ授業を行い、さらに発展させました。これは3年間行いました。
□とんとん拍子にうまく動いていますね
今年の2月には、アリオ八尾で、ずっと以前からの夢だったロボコンを開催することが出来たんですよ。非常にたくさんの人に来ていただくことができました。
7チームが出場したんですが、1チーム以外は殆ど素人のチームで、競技になるかどうかも心配だったんですが、ちゃんと競技できてよかったです。
□チームというのは中小企業の方ですか?
そうです。5社くらいが組んでひとつのチームを構成しています。ルールとしては、材料費の上限を15万円としたこと、子供たちをチームに入れることでした。ロボットの操縦は子供たちです。子供たちには、2足歩行のロボットで学習してもらうというのもルールとしました。
ものづくり主体の素人チームが多かったので、制御などは学生さんに手伝ってもらいました。1チームは、手伝ってくれた学生さんのチームだったんですけどね。
学生さんとはいいつながりが出来たんですよ。ロボコンを手伝ってくれた学生の一人は、われわれの仲間の企業に就職しました。このような機会を通し、通常は見もらえないわれわれの良さを理解していただけたのでしょうか、魅力を感じていただけたようです。
このご縁で、3月には八尾市からロボットの注文をいただいたんですよ。5月始めに一般公開しました。子供たちがリサイクルについて学ぶリサイクルセンターの学習プラザっていう施設があるんですが、そこで学習のお供としてロボットを作ってほしいと。音声認識と発話機能を備え、いくつかの質問に答える機能を持っているんですが、それにアルミ缶とスチール缶、ペットボトルを識別して処理の仕方を教えるという機能もつけました。
<缶の区別はどうして行っているんですか>
ハンドで一定の強さでつかんで、変形量で区別します。
<ロボットというとデザインが重要な部分を占めると思いますが>
そうです。すずきよしひろさんという、NHKでロボットのキャラクタを使ったこま撮りアニメで有名なデザイナーさんにお願いしました。私のブログ友だちで、つながりをつくりたいなと思っていたんです。それで東京まで行ってお願いしてきました。デザインからボディー製作までお願いしたんですが、われわれの趣旨に賛同してくださって、協力をいただきました。
■これまでの成果はビジネスに役立っているんでしょうか
本当は無料で試作をしないんですけどね。ロボット分科会の会長としてなんとか道筋をつけなければと思っていたんですね。
■会長って大変ですね
とにかく最初のころは、ロボットの仕事をどう集めるかに躍起でしたね。また、会長の立場としては、うちはさておきみんなが儲かるようにしないとね。儲けが先にたつと、このような共同作業はすぐつぶれます。また、カネの流れがなくても続くような仕組みも必要です。たとえば、さきほどのロボコン。あれはめちゃめちゃ楽しかったです。
<私たちも出してもらえるでしょうか?(産技総研)>
もちろんですとも!。
「八尾をロボット産業の町に!」「ものづくりを担う子供たちを育てる!」と熱く語る鈴木さん、今後のご活躍を期待いたします。
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