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第11回BMBインタビュー[吉持製作所]
- 2009/01/22 18:00
- 投稿者: kawamoto(oidc) カテゴリ:BMBインタビュー
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生野を拠点とするものづくりの異業種交流会フォーラム・アイの代表幹事として、また、IT経営を促進するe製造業の会会員として、そしてもちろんBMB会員として、ヘラとキーボードを縦横無尽に操る“生野のアルチザン*1”こと吉持製作所代表 吉持剛志氏にインタビューしました。 ■ヘラ絞りというのはどんな加工技術なんですか。
ヘラ絞りは、ヘラ絞り用のロクロに薄い円盤状の金属材料を固定してそれを回転させ、金属にヘラ(またはローラー)を押し当てながら金型に沿わせて成形する加工方法です。形は回転体に限られますが、後で部品どうしを溶接してつなげることもできます。素材はアルミが適していますが、銅やステンレスでもできます。プレス加工よりも金型代が節約できますから、円筒形の製品や省ロット低コストの製品、試作にも向きますね。
■大阪のヘラ絞り業はどんな具合ですか。
今、大阪府で200社ぐらいヘラ絞り業者が存在するんですが、ほとんどが下請け体質で、自ら製品を開発しようとしているところは非常に少ないです。このままではじり貧ですので、私も積極的に動いているんですが、一つはへら絞りという技術の継承を行って行きたい。このために、工業高校などの課外学習をはじめ、ヘラ絞り体験を通じて啓蒙活動を行っています(ホームページでPRしており、これを見て体験を申し込んでくる人もあります)。
若い人がヘラ絞りを受け継いでいくためには、職場環境の改善や、なにより仕事が増えないといけません。しかし、単なる技術の伝承だけではなくて、ヘラ絞りの新しい技術開発が必要だと感じています。例えばロボットにヘラ絞りをさせるとか、加工時に柔らかく、後処理で硬くなるような金属材料を開発するとか。そうすればヘラ絞りの用途ももっと広がると思うんです。
もう一つは、こういったヘラ絞り業者が、自ら販路を開拓できる先陣になることを目指しています。
そのための試みがデザイナーとの新製品開発です。
ここに並んでいるヘラ絞りのテーブル(の脚)とか、照明器具とかは全部デザイナーさんとの仕事なんです。ホームページやブログを始めるようになって、最近こういうコラボレーションがちょっとずつ増えていますね。
この前もメビック扇町を会場に、関西ブランディングデザイン協会の展示会があり、ランデザインの浪本さんとのコラボで花器を出展しました。浪本さんは関西ブランディングデザイン協会のメンバーでBMBの会員でもあります。浪本さんは、BMB会員の村上さん(村上紙器工業所/貼り箱)や、河手さん(和紙商小野商店/和紙)とコラボレートしていて、彼らも異業種交流会フォーラム・アイ(以下FI)のメンバーで活躍しています。そういうご縁で浪本さんが当社にヘラ絞り体験に来られまして、大阪の匠の技術を活かしたものづくりができるといいねということで意気投合しました。
■浪本さんとのものづくりはどのように進んだのでしょうか。
この花器の上部は私がアルミをヘラ絞りで加工したものです。下部は大阪では数少ない吹きガラス職人、GGG(Glass and Graphic Garage)の佐藤さんにお願いしました。佐藤さんは生野に吹きガラス工房を持っておられます。そして、浪本さんに全体のプロデュースとデザインを担当していただきました。
ガラス瓶にアルミを挿し込んだようなデザインで、中に木の実を入れたり、色砂を入れたりできて、特に花を生けなくても成立するようなコンセプトです。
■この花器はFIの新ブランド展開ということになるのでしょうか。
そうですね、もう少しブラッシュアップして新ブランドにできればと思っています。そのために、ものづくり委員会というのを立ち上げているんですが、メンバーもデザイン性が大事だということは理解していて、ものづくりで形だけを決めるのではなくてコンセプトとかストーリー性とか基本的なことをおさえながら活動しています。
FIは、1997年9月に大阪商工会議所東成・生野支部のバックアップをうけて発足した、ものづくりに情熱をかける異業種交流グループです。「生野を日本のミラノに」というキャッチフレーズで、結構マスメディアの関心度も高いんです。株式会社リラッペ企画の山崎さんをリーダーに進めた、革とアルミのパンチングメタルを融合させた「YOROI ブランド」というのがありまして、自転車やビジネスバッグ、名刺入れなどのアイテムがありますがこれは高級路線でして、もう少し値ごろ感のある日常のステーショナリーアイテムで商品展開を増やしていこうということになっています。
■ところで、今回の試作ではお互いに経費のやりとりというのは発生していないんですね。
そうなんです。そこが我々にとっても参加しやすいところで、技術や材料、アイデアはお互いが持ち寄って、いわゆるギブアンドテイクで進めています。
関西ブランディングデザイン協会も、自社ブランディングの重要性を関西企業に啓蒙しながら、企業とデザイナーとメディアとのマッチングをはかり、優れた関西企業を世界にアピールすることをテーマに活動していますから、我々FIと目的が同じなんです。形だけのデザイナーじゃなくて「文化でも変えたろか!」という熱い想いを持った人たちですよ。
■皆さんBMBの会員ですから、プロダクトでの成果を何とか実現して欲しいですね。FIがデザイナーとのコラボレーションにBMBを活用していただいているのは本当にありがたいことです。
BMBには優れた技術を持ったものづくり企業も優秀なデザイナーもたくさん参加されてますから、皆さんもっと交流して魅力的な大阪ブランドを生みだして欲しいですね。それには、両者の仲を取り持つコンセプター*2が必要じゃないでしょうか。
■そうですね。その役割を担えるように頑張ってBMBを盛り上げていきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
■用語解説
「アルチザン」とは、フランス語で職人(英語:craftsman)のこと。自ら身につけた熟練した技術によって、手作業で物を作り出すことを職業とする人のことで、「職人」は主に工業として物を作る人間を指します。ちなみにイタリア語では「アルティジャーノ」(artigiano)といいます。
「コンセプター」とは、商品開発に携わるメンバーの発想や能力を十二分に引き出しながら、それらを融合し、一つの作品を作り出すことのできる人。それに対し、「プロデューサー」は、自らの思想(コンセプト)をもとに人々を鼓舞し、一定の目標に向けてリーダーシップを発揮できる人です。
日産自動車から「Be-1」を世に送り出し大ヒットした坂井直樹が有名。
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