3月30日の数字:残業代割増率が50%に

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もらう方は一円でも多い方がいいに決まっている残業代。
今回の法改正については
いろいろ考えるところがあるようです。

4月1日から改正労働基準法が施行される。今回の改正の目玉は、残業代割増率の引き上げだ。時間外労働が月60時間を超えると、割増率が50%に跳ね上がる(日経産業新聞2010年3月30日付26面)。

改正前は25%だから、一気に倍に引き上げられることになる。労働者にとっては朗報であるが、経営者にとってはバッドニュースだろう。長引く不況のために現時点では月60時間を超える残業をしていなくとも、景気が好転すればどうなるのか。

一ヶ月20日出勤なら、毎日3時間以上残業すると60時間を超える計算になる。トータル残業時間が60時間を超えた途端に、生産性が50%アップするなどということは当然あり得ない。むしろ残業時間が伸びるほど、生産性低下の可能性が高くなるはず。今回の法改正に納得いかない経営者は多いのではないだろうか。

私事になるが、大学を出て初めて勤めたのは印刷会社だった。その会社には、営業マンは残業代を申告しないという自主規制ルールがあった。が、所属こそ営業部であるものの、業務内容がひたすら原稿整理だった筆者は、残業届をせっせと出した。

おかげである月の給料が、一年先輩の倍ぐらいになったことがある。当時はまだ週休二日制ではなく、土曜も含めて平日は5時間から7時間残業し、日曜日も休日出勤して朝から晩まで原稿整理に励んだおかげで、時間外労働が200時間を超えたのだ。

このとき思ったのが、残業代の理不尽さだった。さすがに経営者の視点を持つには至らなかったが、それでも変だなとは思った。ひたすら原稿整理をしているかたわらで、先輩社員たちは印刷物の見積を計算したり、会議の資料を作ったりしていた。

『その仕事』は残業代を請求するのに値しないのだろうか。これが当時の疑問点だ。その後、デザイン事務所でコピーライターをやるようになり、今度は残業代などまったくない世界で過ごすことになる。キャッチコピー一本考え出すのに、どれだけ時間がかかるかは「君の能力次第だから」と言われれば「そうですね」と答えざるを得ない。

できる人は優れたコピーを10分で思いつくし、ダメな奴は3日徹夜しても使ってもらえるコピーをひねり出すことができない。残業代をきちんともらえる職場とそうでない職場、どっちが良いとか悪いという話ではない。職種によって、残業代の捉え方はまったく違うということだ。

ただ心配なのは、製造業の国外流出が進みはしないかと言うこと。製造現場に残業代はつきものだろう。景気がよくなって残業が増えた途端に、残業代負担がどんと重くのしかかってくるようでは、経営者にとって国内で事業を営むデメリットが増えることになる。

モノづくりの現場が海外にシフトするのは、日本の将来にとっては大きなマイナスだと思う。