3月12日の数字:9to5の農作業

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日本の食糧自給率改善の一助となり得る植物工場。
そこには、どんな可能性があるのでしょうか?

日の出と共に始まり、日の入りと共に終わる。農作業といえば一般的なイメージはこうなるだろう。作業場所は基本的に屋外である。夏は暑さの中で、冬は寒さの中での肉体労働となる。

そうした農作業だけで生計を立てている農家の数は、今や全国で40万世帯を切ろうとしている。1905年、今からざっと百年前には約400万世帯弱だったから、わずかに10分の1以下にまで減ってしまった。当然、食料生産量も減る一方だ。

いまや日本の食糧自給率は40%を切っている。このままで良いはずがない、と立ち上がった企業がある。京都にあるベンチャー企業フェアリー・エンジェル社だ。同社は世界最大規模の植物工場を立ち上げ、その生産物の流通から販売までを統括する野菜版SPAモデルを展開している。

そのフェアリー社が新しい展開をはじめた。製造請負のフジワーク社と組んで植物工場の運営を担う人材育成事業に参入する(日経産業新聞2010年3月11日付17面)。

フェアリー社の植物工場は、クラス10万レベルのクリーンさを誇る。これは製薬工場や半導体生産現場と同じレベルだ。こうした徹底的にクリーンな環境で植物を栽培するには、それなりのノウハウが求められる。そのノウハウを教える。

「フェアリーエンジェルの栽培ノウハウと、製造業務請負で培ってきたフジワークのノウハウを一体化した教育プログラムを作成(前掲紙)」し、参入を考える企業の支援もするという。

植物工場自体は、ビルの一室ぐらいのスペースがあれば展開可能。仮に空いている工場などがあれば、絶好の転用先ともなる。現状ではレタスなどの葉もの野菜がメインだが、ほかにもさまざまな野菜を育てるためのノウハウが開発中だ。

そして植物工場は働く人に優しい環境でもある。就業時間はきっちり9時から5時まで、しかも空調、照明共に行き届いた快適な空間の中で、たくさんの緑豊かな野菜に囲まれて働くのだ。フェアリー社の社員は、工場で働くことによって癒し効果やストレス解消を感じるという。

遊休工場があるなら、植物工場への転用を考えられてはいかがだろうか。日本の食糧自給率の一助となり、しかも従業員に快適な労働環境を提供することもできる。一石二鳥どころか三鳥にもなる可能性がある。

フェアリー社の事業展開については、ぜひ、下記の記事もご参照ください。→ http://www.insightnow.jp/article/3741