11月12日の数字:工作機械受注42%減

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工作機械の受注が少しずつ上向いているようです。
しかし、その根底では大きな変化が起こっている。
そんな話があります。

「日本工作機械工業会が発表した10月の工作機械受注額(速報値)は前年同月比42.6%減の467億円。9月に比べると減少幅は20ポイント縮小し、3ヶ月連続で前月実績を上回った(日経産業新聞2009年11月11日付20面)」

少しはましになりつつある、というところなのだろう。が、それで喜んでいてはいけないのではないだろうか。先日取材させていただいたある上場企業の社長さんの言葉が、頭にこびりついて離れないのだ。

すなわち「事業環境が、非連続的に変化した。その前提で今後を考えていかないと経営が成り立たないと。

自動車関連ではこれから、間違いなく中国シフトが加速する。そこはコストハーフの世界だ。もちろん、そのためにはある程度品質が犠牲になる。が、それでも中国メーカーの技術力向上には目を見張るものがある。

そして何よりの問題は、新しい世界では、今の日本の競争力の源となっている高品質が必要とされない恐れがあること。オーバースペック故のコストは認めてもらえないという話だ。

もちろんあらゆるジャンルに当てはまる話ではないだろう。産業用ロボットなどでは、依然として日本の技術的な優位性は世界の認めるところだと思う。が、中には日本製品ほどの品質は不要、それより少々落ちても良いから価格をもっと下げて欲しい。そんなニーズがあるのも確かな話だ。

実際にそこそこに走るクルマであれば、中国製パーツを使って日本の半分ぐらいの原価で作ることができてしまう。そのとき日本のパーツメーカーはどうするのか。

あるいは別の産業機械メーカーの社長さんは、悪かろう安かろうの中国メーカーの淘汰が進んでいるとおっしゃっていた。そこで何が起こっているのか。生き残ったメーカーのモンスター化だ。潰れていくメーカーを吸収合併し、あるいは設備を買いたたき、力を付ける。

同時に優れた人材(中国にはやる気があって能力もある若者がいくらでもいる)を使って技術革新を進める。その結果、日本製の9割ぐらいの品質の機会を6割ぐらいの価格で提供できるように『なってきている』。現在進行形なのである。

こうした動きを踏まえて、森精機製作所はドイツメーカーと組んで中国市場の開拓に乗り出している。目玉は「現地技術者を活用して生産し、しかも余分な機能をそぎ落とすことで、価格を従来の製品より1割程度引き下げた(前掲紙)」。

これが非連続的変化を遂げた新しい事業環境への対応策の一つになるはずだ。難しい時代、だけれどもここを乗り切らないと生き残れない可能性もある状況、だからこそチャレンジしがいのある未来ということなのだろう。