10月2日の数字:顧客の声、一日平均100件

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新規顧客獲得にかけるコストの10分の1を既存顧客にかける。
それがひらく豊かな可能性にお気づきでしょうか

京阪電鉄の「センターには1日平均で約100件の問い合わせや要望、苦情が寄せられる(日経産業新聞2009年9月30日付8面)」という。同社は「2007年に問い合わせ窓口を一本化、利用者の声をデータベース化し始めた(前掲紙)」。

少しでもサービスの質を高める。ユーザーの利便性を高める。およそ、すべての企業にとって何より大切なのが、まず既存顧客の満足度を高めることだ。だからといって、もちろん新規顧客開拓の重要性を否定するわけではない。

しかし、新規顧客を一人開拓するためのコストと、既存顧客一人を維持するコストを比べれば、後者は前者のおそらく十分の一以下で済む。にもかかわらず、なぜかここをケチる企業が多い。

これが不思議だった。釣った鯛にえさはやらない、とはよく言ったもの。ひとたび顧客となってくれた相手に対して、さらにコストをかけることはもったいないとでも思っているんじゃないだろうか。だとしたら、大きな間違いだ。

一人の既存顧客がもたらしてくれる次の顧客、それこそがもっとも確実な新規顧客である。仮に新規顧客一人を獲得するために使っているコストの半分を既存顧客にかけて、新規顧客紹介を促せばどうなるだろう。

成果が明らかなのにあまり実践されていない理由を推測すると、もしかしたら、既存顧客に対するコストのかけ方がわからないんじゃないだろうか。実は、これは極めて簡単である。人件費をかけて、ユーザーからきちんと話を聴く、それだけだ。

とはいえ通り一遍のアンケート調査などではなく、声の大きい人に左右されてしまうグループインタビューでもない。顧客一人ひとりに対してじっくりと時間をかけてデプスインタビューをする。

あらかじめ質問をきちんと用意し、その上で顧客ごとに最適化されたシナリオを考えて「傾聴」する。万が一、既存顧客が何らかの不満、不安などを抱えていれば、それこそが最高の情報となるだろう。顧客の「不」を改善することが、新製品、新サービスに直結するはずだ。

もし、顧客がほめてくれでもしたら、それは次の顧客を獲得するためにこれ以上ない広告材料となる。広告や販促にコストをかけることを否定はしないけれど、既存顧客へのコスト配分とそれによるパフォーマンスについては、今一度きちんと見直されていいと思う。