8月23日の数字:100年先を考える視点

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唐突に思えたキリンとサントリーの統合話。
その裏側にはリーディングカンパニーのトップならではの視点があったようです。

「加藤社長はさらに100年後のキリン社員が次につなげていける、そのためのベースを作りたいと決意も語っていた(日本経済新聞2009年8月4日付朝刊17面「大機小機」)。キリンとサントリーがなぜ、経営統合に踏み切ったのかを解説した記事にあった一文である。

言うまでもなくキリンは日本で、押しも押されもしないリーディングカンパニーだ。しかし、現時点ではアジアのリーディングカンパニーではない。ここで少し思考の枠組みを広げてみればどうなるか。これまで日本は世界第二位の経済大国だった。だから、その日本のリーディングカンパニーであることには、それなりの意味があった。

しかし、おそらく今年中にも日本は『世界第二位』という金看板を下ろさなければならない。その時、日本のリーディングカンパニーの座は世界的に見てどうなるのか。

もっと視点を広げてみればどうか。仮に5年後の世界を想定してみればどうか。その時点でも日本はまだ、世界第三位の経済大国であり続けれられるのか。

幸いにも5年先はまだ第三位だったとして、そのポジションはこれからも維持できるのか。この先人口がどんどん減り続け、これといった資源もない日本が。

しかも次代を任せるべき若者たちの劣化の激しさはどうか。特に中国をはじめとして日本を追い越すために(もしかしたらすでに彼らの視野の中には日本など入ってさえいないかもしれないが)勉強に仕事にと燃えているアジアの若者たちと比べてみたときに。

海外の現状を目の当たりにしているキリンのトップならば、冷静に考えれば考えるほど、日本の将来を楽観的に捉えることなどできないだろう。そしてリーディングカンパニーであるが故に、キリンのトップには常に、百年先の自社の姿を思い描くことが義務づけられていたのだとする。

その結果がサントリーとの提携になった。『大機小機』の解説は、こんな内容だった。我が社はキリンじゃないから、と言い訳するのは簡単だ。では尋ねたい、御社は何年先までの生き残りを考えているのか。仮に10年先を考えているというなら、その時の状況についてどれだけ真剣なシミュレーションをしているのか。

あるいは、私は経営者じゃないからと言い逃れをすることもできるだろう。では、あなたの人生の10年後は、どうなっていたいのか。その時の自分の周りの状況をどう読んでいるのか。

思考をストレッチすることで、必ず新しい視点を得ることができる。必要なのは、自分の未来に対する真剣な思い、それだけである。