8月10日の数字:1万分の1ミリの職人技

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究極の仕上げは機械では不可能。
職人の経験、勘、技を超える機械は未だありません。

究極の金型ともなると、求められる精度は1万分の1ミリレベルになる。すなわちサブミクロンの世界だ。そして、この精度を実現できるのは、超精密な機械では決してない。残念ながら現時点では、いくら機械の精度が高まったとはいえ、サブミクロンレベルの精度で完璧に仕上げるのは難しい。

そこで「最後に頼りになるのは職人の経験と勘。絶妙な仕上がり具合は熟練職人の五感にかかっている(日経産業新聞2009年8月7日1面)」

結局、最後は人間の力が物を言う。逆に考えれば、人間の力がどれだけすごいかという話でもある。以前、ある大学の先生から聴いた話では、新幹線のノーズ部分の仕上げを受け持っているのも、やはり熟練職人とのことだった。

彼らは、いかにも無造作に鉄板をハンマーでがんがん殴るそうだ。傍目には乱雑にしか見えない叩きぶりについて、後で職人に聴くと「殴るべきところ、殴る強さ、角度は見えている」とのこと。これが、おそらくは第六感にも支えられた人の力ということなのだろう。

実は人間の脳の情報処理能力は、パソコンなどをはるかに凌駕するレベルにある。だからテレビのサブリミナル映像が禁止されているのだ。つまり人間の脳は、潜在意識できちんとサブリミナル映像を認識している。つまり、サブリミナルはほぼ間違いなく効果があるのだ。

それぐらいの処理能力は余裕で持っているのが、人間の脳である。であるなら、そうした脳の力を手業と連動させることも可能なはずだ。つまりいくら数値制御のマシンが進化したとしても、まだまだ鍛錬された人間の力に及ぶはずもない、というのが真相だろう。

そして、もしかしたら、この職人技の世界にも日本の製造業が生き残る道があるのではないだろうか。話は国民性と関わるのだと思う。きちんと、ていねいに、手抜きなく、ごく細部にこだわる。これが日本人の美質であり、これを職人魂と呼ぶはずだ。

この職人魂の継承こそが課題だろう。そのすごさ、すばらしさを伝えること。技を持つ職人の方々をきちんと評価すること。ここに日本の製造業の未来がある。