シルクリビングケット
経営者ならKYよりMY
- 2008/08/18 10:23
- 投稿者: takebayashi
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KY、すなわち「空気読めない」人は今どきのコミュニケーションから置いてきぼりにされかねない。しかし、ビジネスのプロ、特に経営者やマーケッターなら、求められるのはMYだ。ではMYとは一体なにか。
10年後の世界第二位の経済大国は?
たとえば世界第二位の経済大国はどこか。日本である。ただし、これまでのところは、という保留条件がつく。そこで次の質問、もう3年後に迫っている2010年に同じ質問をすれば、正解はどう変わるだろうか。
確定とまでは言い切れないにせよ、かなりの確率で答は「中国」となっているはずだ。さらに2020年ならどうか。今から13年後には世界第二位の経済大国が「アメリカ」となっていたってちっともおかしくはない(ひょっとすると第二位がインドという可能性さえある)。
そんな未来を今から読んだ上で、どんなビジネス(=価値提供)を、どんな業種・業態で、どのエリアで、誰をターゲットに定めて、自社をどんなポジショニングにおいて展開していくのかを考える。これが古い言葉でいえば『先見の明』であり、今風に表現するなら『MY(マクロ読め&未来読め)である。
意外に難しいマクロ分析
ところでマクロ分析といえば、実はマーケティングのイロハのイである。が、これを正しく行なうことは意外に難しい。なぜか。マクロな動きを的確に把握するためには、常日頃からいくつかのテーマを持って、世の中の動きを見ていく必要があるからだ。
だから、たとえば急に「じゃあ、いま企画している○○のマーケティング企画を考えて」と依頼されて、さて、その○○を取り巻くマクロ環境はとリサーチしても、通り一遍のことしか掴むことはできない。それではズバッと核心を突いたプランニングを立てることは難しい。
なぜか。マクロの動きは短期的・表面的には目立った変化として出てこないからだ。逆にいえば、だからこそその流れを的確に読める人にはビッグチャンスを掴めることになる。
10年前に、今のケータイを読んだ企業
たとえばケータイ通販である。このところケータイ通販のマーケットサイズが急成長している。その拡大するマーケットの中でほぼダントツと言ってよいぐらいの強みを発揮している企業がある。ゼイヴェルという。東京発(初でもある)のリアルクローズ・ファッションイベント『東京ガールズコレクション』を仕掛けている企業と言った方がわかりやすいかもしれない。
このゼイヴェルがケータイ通販に目を付けたのは、ドコモのi-modeがサービスインするかしないかの時代、まだ21世紀を迎える前のことだ。当時のケータイは、もちろんまだモノクロ画面である。その貧弱な画面はモニターと呼べるれべるではなく、まさしく画面と呼ぶしかない代物だった。小さい、見づらい、通信速度も遅い。ましてやまだまだ「つながる」こと自体がキャリアの差別化ポイントになっていたような時代の話である。
そんな時代にケータイでの通販を企むのは狂気の沙汰だったかもしれない、マクロを読んでいない人たちの目からすれば。しかしMYな人、ゼイヴェル社長大浜史太郎氏は違った。彼がその時点で見ていたのは、5年後のケータイの世界である。
5年も経てばケータイの画面はきっとカラーになっている。画面もおそらくは一応、モニターと呼んで差し支えないサイズになっている。通信速度も何十倍にも速くなっている。さまざまなプログラムが動くようになっている。画像はくっきり鮮明、動画だって見ることができるようになっている(かもしれない)。もし近未来のケータイがそうなると読めていたら、それでもケータイで通販を企むのは愚かなことといえるだろうか。
技術の進化が暮らしをどう変えるのか
ポイントはデバイスの技術的な進化を読むだけでは不十分だという点だ。ケータイが飛躍的な進化を遂げたとき、それが暮らしの中でどんなポジションを占めているのか。ここに思いを馳せることができるかどうか。
恐らく大浜氏はケータイが24/365/30メディア(24時間365日30センチ以内にあるコミュニケーションツール)となることを読んでいたのだろう。であるなら、これこそが最強・究極の通販ツールとなる。それぐらいのMY力を発揮されたのではないだろうか。
もちろんゼイヴェルの成功は、社長のMY力だけに依るものではない。ケータイ通販ナンバーワンのポジションを確立する過程では極めて戦略的にフェーズを立てて、その時点で必要なアクションをきちんとこなしてきている。これを大浜氏はディズニーランド戦略と呼んでいた。これも実に興味深い話だったけれど、ここでは論旨からずれるのでふれない。
MY(未来&マクロを読む)楽しみ
というぐらいにMY力を的確に使えばは大きな力を発揮する。そして、この力はやはり意識して養わないと使えるレベルにはならない。大局観のように世の中の出来事すべてを対象とするのではなく、ある程度自分が関心を持てる分野に絞り込んで、その大きな流れを読んでいく。そして自分の読みをベースとして、さらに周辺分野への波及効果を考える。こうしたトレーニングが必要だと思う。
個人的にいまもっとも関心があるのは、改正建築基準法である。これが福田首相登場とともに急に言われ出した『二百年住宅構想』とこの先、どう結びつくのか。これはもしかしたらかなり壮大な規模で日本の産業界のありようをかえる動きなのかもしれない、などと思って一人わくわくしたりしている。
という具合に個人的な知的お遊びとしてもMY、オススメだ。