低温焼きなまし:引張ばねの初張力に及ぼす影響とフック加工について

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初張力は引張コイルばねにおいては重要なばね特性の一つですが、下図のように初張力は低温焼なましを行うと温度の上昇ともに減少するのが普通です。引張コイルばねにおいて初張力が大きく低下しない範囲でかつなるべく高い温度(ピアノ線・硬銅線の場合は200~250℃程度)で低温焼なましを行います。
この温度は一般のばね成形後に行われる低温焼なまし温度より低いので、除去される残留応力も少なく、安全な製作とは言えないです、よって引張コイルばねの許容設計応力は圧縮コイルばねの設計応力より低く設定します。
引張ばねへの要求特性として非常に高い初張力が設定されることがありますがが、そのような場合は低温焼なましを実施しない時もあります。こような時は更に設計応力を低くする必要がある。
引張コイルばねにおいて更に注意しなければならないのは、引張コイルばねのフック部加工です。低温焼なましにより加工性が劣化するので、フック加工はなるべく低温焼なまし前に施工するのが良いのですが、精度の点からどうしても低温焼なまし後に加工を行う必要があります。このような時は加工後に再度、低温焼なましを行わないと、この加工により発生した残留応力が除去されず、思わぬ不具合を発生させる原因となるので注意が必要です。

 

引張コイルばねの初張力に及ぼす低温焼なまし温度の影響
引張コイルばねの初張力に及ぼす低温焼なまし温度の影響