「モータースポーツ事情」産業源・パリダカ編

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25年間携わったモータースポーツは私のデザインの基盤です。


パリダカールは産業の源
ラリーシーンで有名なパリダカールラリー。私は色々な面で関わって来ました。
1978年フランス人の歯医者の息子であった
ティエリー・サビーヌは大冒険ラリーツアー「私にできるのは、“冒険の扉”を示すこと。扉の向こうには、危険が待っている。扉を開くのは君だ。望むなら連れて行こう」という名台詞と共に開催しました。友人達とのデザート(砂漠)での遊びが、やがて多くの冒険好きを引き付け、やがてそれが世界中の大手企業を巻き込み巨大化するとはサビーヌも最初は考えてはいなかったでしょう。1986年に競技中ヘリコプター墜落事故により死去。その後、父親は歯科医を辞めTSOを設立して運営に取り組みます。

1994年からは、ツールドフランスも主催するASOがサビーヌの親友”オリオール”を迎えて運営されます。当初ラリーはパリをスタートし地中海を渡り、アフリカのセネガル国の西海岸ダカールを目指しました。期間は15日、走行距離12000kmという創造を絶した、正に生死を賭けた冒険レースだったのです。戦火の中や、各国への支援金やイベントを提供しながら数カ国を走るという、政治的な関わりをパリ・ダカールラリーは抱えていました。難所はサハラ砂漠、サビーヌが無くなったモーリタニアの砂丘や、戦争中の兵士とのトラブルが最大の難関でした。2008年様々な問題を抱えラリーは中止され、2009年からは舞台が南米のアルゼンチンに移ります。


オフロードカーブームと走る実験場
レースは走る実験場と言われ、また注目度の高いレースに世界中のカーメーカが挙って参戦してきました。ヨーロッパの車メーカーの独壇場だったこのレースに三菱自動車のレース部門ラリアートが参戦、WRCを含むオフロードレース中心に毎年100億の予算をつぎ込み、4WDファミリーカーの代名詞となった「パジェロ」を投入します。しかし、優勝を狙うワークスマシーンは、デザインこそ似せてあっても一般車両は全く異なり、エキゾーストから出る爆音とアフターファイアーは、正にオフロードを走るF1そのものでした。(三菱自動車の企画の方に見せてもらいました)また、日本のトラックメーカー日野自動車がカミオン部門に参戦、昨年カミオン部門最多出場で菅原氏と共に表彰されています。(菅原氏は温厚で優しい心の冒険家です)




バイク1台1億円
パリダカールラリーは主催者サビーヌと親友のオリオールやヌブー達がオフロードバイクで始めたレースです。世界一過酷といわれるこのレースに、世界中のバイクメーカーが参戦、日本のホンダやヤマハもワークス参戦し、市販車にもやがてビックオフローダーといわれるカテゴリーが生まれます。ファクトリーマシンは1台1億円といわれ、各メーカーはチームを組み砂漠での開発に取り組みました。世界のオフロードライダーは、パリダカールに参加する事を夢見るようになりました。私もその一人です。。(友人のトシ西山氏が参戦)



倒産の危機を救う
スポーツカーで有名なポルシェは959をパリダカールラリーに投入。スポーツカーがオフロードで勝てるのかという疑問を持ったのは、私だけでは無かったと思いますが、実はポルシェはオフロードのベース車としてはプラーベートチームが世界中の様々なレースで数多く採用していたのです。特に水平対抗エンジンがオフロードに強いということです。あのSUVブームの火付け役となった「カイエン」は、当時ポルシェが倒産の危機を救ったラッキーカー。ポルシェのオフロード市販車部門への参入という意外性と、男性的で迫力のあるデザインがユーザーに受けた背景には、パリダカールへの参戦で開発したフルタイム4WD機能、耐久性の強いエンジンや車体の開発力が役立ったんですね。
 

パリダカの足はフランス製?
パリダカールに関わり、商品開発を行ったのは二輪、4輪メーカーだけではありません。レースに最も必要とされる部品があります。そう!タイヤです。それまでオフロードタイヤは数多く開発されてきましたが、ラリー専用のタイヤには、過酷な条件に対応する様々な機能、性能が必要でした。ミシュランの開発した、ラリー専用タイヤ「ロングディスタンス」は正に長距離のオフロードを走破するために開発されました。そのためにミシュランは原料を取るための専用のゴムの木を開発し、育てていたのです。タイヤは二輪、4輪用があり、実際私もメキシコのbaja1000で使用。新品のタイヤにはビードというタイヤ材の注入口の型が表面に7~8mm残っているのですが、過酷な荒地を500km走破してもタイヤのブロック角どころか、小さなビードも4mm程度残っていて、その性能や機能の素晴らしさに驚いてしまいました。日本の輸入発売元である岡本理研ゴムも知らない事実です。

web資料から抜粋
ノンパンクタイヤ
また、今注目されている自転車用のノンパンクタイヤの発案も、元々はミシュランですね。タイヤは丈夫でも鋭利な岩や金属、木の破片などに激しく打ち付けたると、タイヤは簡単にパンクしてしまいます。ミシュランはチューブに発泡ゴムを採用。ムースチューブ「ビブ・ムース」を開発。釘や刃物を刺しても絶対パンクすることはありません。しかし高速(140km以上)のストレスが長時間熱が加わると溶けたり、表面の皮が裂けると、バラバラになってしまうという難点がありましたが、現在はジェル素材の採用等でその問題も解決されてきているようです。

フランスの冒険好きな青年が友人と遊び心で始めた冒険レース"パリダカールラリーは、世界中の様々な製品(特に乗り物部門)に影響を与えました。また、世界的な冒険レースの存在が、レースを主催するオーガナイザーや資本家達がシルクロードラリーやファラオラリー、インカラリー、オーストラリアサファリ等を次々と主催し、追従して来ました。日本のオーガナイザーにyラリーレイドモンゴルやロシアラリーなどが主催され、冒険家達が世界中の大自然に挑戦し格闘して来ました。

エピソード
パリダカールに参戦する日本チームに、ミシュランのラリータイヤ「ロングディスタンス」を当社から送った事があります。そのタイヤは日本の輸入発売元である岡本理研ゴムに権利が無かったので、国内では手に入らず、わざわざアメリカから運んでもらったものを送ったのです。製品はフランス製ですからタイヤ1本が地球を1週したんですね。そんな、貴重な商品や企画、デザインに私も、また再び関わってみたいです!

凡十郎はオフロードバイク初の
プロジェクターヘッドランプダイクロハロゲンヘッドランプの商品開発、レースのスポンサード企画書の製作やロゴも行って来ました。その記事は次回のブログに書き込みたいと思います。ご清聴ありがとうございました。m(_!_)m 凡十郎

40歳になったらパリダカに出るんだと真剣に考えてました。