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第20回BMBインタビュー[和紙商小野商店]
- 2010/05/10 18:00
- 投稿者: nishimura(oidc)
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和紙製造の工場見学会や和紙の展示会『和・心・伝・紙』展(メビック扇町)ではデザイナーとコラボしたり、ギフトショーでは新しい作品を出品するなど、現代の生活スタイルへの和紙の可能性を提案しておられる和紙(わがみ)演出士の肩書きをもつ和紙商小野商店の河手宏之氏にお話を伺いました。
■創業はいつ頃からですか。
ルーツは、祖父がもともと中国で紙関係の販売をしており、その関係で、戦後に襖・障子の和紙といった内装材の販売を始めたのがきっかけと聞いています。その頃、越前和紙とのルートが出来たようです。今年で創業64年になりますね。現在、和紙の産地としては越前が有名ですが、元々大陸から越前地方に伝わり、全国に広がっていったようです。四国の徳島や鳥取、三重といったところとも取引させていただいています。昔は障子といえば美濃紙が有名でしたが、今はほとんどないですね。昔ながらの製法、材料を使っているところは、お寺関係が残っていますが、一般家庭は少なくなっています。他に芸術系といいますか、横山大観、ピカソ、平山郁夫、現在では千住博さんなどが和紙を使った作品を残しています。また、版画家も多いですよ。
■小野商店さんの特徴は何でしょう。
メインが和紙と小間紙というのは珍しいと思います。和紙も取扱いが多いですが、どっちかいうと小間紙を主に販売しています。小間紙といいますのは、貼箱などパッケージ関係で使われる洋紙と和紙の中間的な紙で、主に装飾用に特化した紙です。その中で、業界で「うるし紙」というのがあるのですが、これが強烈な紙で、多種類で色使いも非常にくせのある素材で、デザイナー泣かせの紙といえます。
■和紙にも、いろいろな種類があるんですね。
内装では、表面加工が多いですが、絵付け、箔など色々な加工技術があり、それぞれ専門の職人さんが連携して仕上げています。私どもでは、襖などで依頼される個人の方もおられます。当店では、規格品+プリント加工など付加価値をつけた紙素材づくりの提案をしています。
その他、壁紙という要望もありますが、防炎規格をクリアする必要があり難しいですね。同じようにランプシェードの要望も多いのですが、同じ理由で限定されています。最近では、発熱の少ないLEDを和紙に漉いた商品も出てきているとのことです。
■漉きの特徴を教えてください。
1)透かし:皆さんがよく知っているものにお札があります。ウォーターマークと呼ばれ、マーク、ロゴ、ことばなどを入れることができます。
用途としては、中学校・高校の卒業証書、懐紙、酒用・焼酎用ラベルなどが多いですね。その外、ブライダル関係など印刷関係の企業から依頼が来ます。
2)漉き込み・漉き合わせ:透かしと普通の和紙との二層構造の和紙で、下地の色が透けて、表面に色のグラデーションが出ているものです。主にパッケージ関係企業のオリジナルの包装紙に多く使われています。機械式と手漉きもあります。商品用のラベルにも使われています。
3)引っ掛け:光によって繊維の反射が変わる加工です。金型を使って手漉き、機械漉き加工したもので二層構造になっています。最大で788mm×1091mm(四六判)の大きさです。たいてい平版で見本帳から選んでいただいています。
■これまで特別な注文はありましたか。
酒瓶のラベルで、「土壁をひっぺがしたようなラベル」を作ってくれという注文がありました。古さを感じさせるラベルです。普通は新しいものを企画しますが、逆の発想ですね。材料の調合から始めて、紙の質感まで考えました。時間はかかりましたが、試行錯誤の上最後は手作業を加えて納品しました。
■こうなると、問屋の域を超えていますね。
結果は、喜んでいただけるものができました。また焼酎ブームの時には、毎月のように新ラベルの注文があり、色々な素材を試させていただき、これもいい経験となりました。
当然、これらの和紙ラベルは印刷工程があります。昔はスクリーン印刷しかできなかったことも、現在ではどのような印刷でも可能となりつつあります。女性に多いですが名刺にも使われています。
印刷で思い出しましたが、昭和初期の写真を使った和紙へのフルカラー印刷の依頼がありました。伊香保温泉の観光用ポスター(四六判)で、ほぼ不可能に近かったのですが、あえて色の沈み込みが良い仕上がり結果になりました。
■メビック扇町の異業種交流会に参加されていますね。
メビック扇町へは5、6年前に行った記憶がありますが、デザイナーやクリエーターと知り合うようになったのはここ2、3年ですね。洋紙はよくご存知だけど、和紙のことを知っておられる方も少ないこともあり、コミュニケーションをとってきました。
■和紙の企画展にも参加されていますね。
和紙展は、デザイナーとのコラボで行われていまして、過去5回の内の直近3回に参加しました。
それ以外に、昨年から大阪ギフトショーにも企画展として初参加し、今年で2回目になります。ギフトショーに参加してから問い合わせもあり、よいアピールになりました。今年はBMB会員の㈱中野木型製作所さんにカッティングをしてもらい、大判の和紙を襖紙に見立てて展示できました。
■IT活用について教えてください。
生野のヘラ絞りの吉持さんの紹介で、BMBに加入したのが始まりです。ブログ活用に慣れたころ、BMB会員の木下さんのアドバイスを受け、BMBサイトでも活用されているCMSのGeeklogを使った自社ホームページを、同じく会員のオビタスター㈱さんに依頼しました。
■問い合わせなどありましたか。
初めの方は少なかったのですが、徐々に増えてきました。デザイナーさんには切口として和紙がなかったのか、ご利用の際はお声をかけていただいています。
■今一番取り組んでいることはなんでしょう。
デザイナーやクリエーターの方との接点をできるだけ持つようにしていこうと考えています。思考や発想の仕方が非常に参考になります。直ぐに商売になるとは考えていませんが、今後一緒に仕事ができたらと考えています。そして、折角たくさんの紙があるので、組合せて自分たちでオリジナルなものを作っていきたいと考えています。
■BMBへの期待はありますか。
物を作っている所、素材を扱っている所と創造的なデザイナーをマッチングする仕組みがこれまで大阪になかったと思いますので期待しています。
小野商店で見せていただいた紙の見本帳は、まるで玉手箱を見せられたようで、その種類の多さとすばらしさに驚かされました。また、お話を伺っていて、演出士という肩書きにも納得させられました。今後の活躍をご期待いたします。
●和紙商小野商店のホームページ
http://www.onopapers.com/
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