3月24日の数字:生産性3割向上をめざすには?

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生産性向上をめざすために
どんな生産体制を取ればいいのか?
製造業にとって永遠の課題に
正解はあるのでしょうか。

流れ作業から一人完結生産へ。生産性を高める作業の方向性が、以前とは完全に逆転したようだ。

「(日立アプライアンスは)細かい部品組み立てから完成品の組み立てまでを1人で行う「完全1人完結セル生産」方式を2010年度中に導入し、約3割の生産性向上を目指す(日経産業新聞2010年3月24日付5面)」

ベルトコンベヤーを使った流れ作業といえば、まず頭に浮かぶのがフォードの事例ではないだろうか。大量かつ効率的に自動車を作るライン生産方式こそは、大量生産大量消費時代の幕開けとなる画期的な生産法ーーー、ざっと40年前の社会科の教科書では、そのように習った。

と同時に子ども心に記憶に残っているのは、そんな工場で働くのは絶対にイヤだなと思ったこと。一日中、まったく同じ作業を機械のように繰り返すだけなんてやってられないと思った。小学生だったから「人間性の否定」などと難解な概念を思い浮かべたわけではないのだろうが、そうした作業が秘める非人間性だけは、何となく感じ取っていたのだろう。

そしていま、生産性を高めるためにライン生産からセル生産へのシフトが起こっているという。日立アプライアンス多賀事業所では、すでに実績もきちんと出ている。

同事業所で作られているのは掃除機だ。その生産方式と生産性向上の推移は下記の通りになる。
コンベヤー生産→1人完結セル生産:生産性31%アップ
1人完結セル生産→カラクリセル生産:生産性29%アップ
カラクリセル生産→完全1人完結セル生産:生産性30%アップ(目標)

カラクリセル生産とは、作業の進み具合に応じて治具を自動的に動かし、作業をしやすくする「カラクリ」を導入した生産方式である。

ライン生産が人間の能力の「限界性」に注目した生産方式なら、セル生産は人間の能力の「無限性」にフォーカスした生産方式といえるのではないだろうか。人の能力に限界などない、と言い切っても良いのだろう。

その能力は、適切な「カラクリ」の支えがあれば、さらにいくらでも伸ばすことができる。たとえ、どんなささいな作業であっても、非人間的な手法ではなく、人間本来の無限の能力を活用するやり方は、必ずあるのだ。