第23回BMBインタビュー(株式会社オークマ工塗)





















部品塗装の専業メーカーとして起業し、他社とは一味も二味も違った経営方針を持ち、最近では海外調達部品の問題解決や、塗装コンサルティングに力を入れておられ、塗装プロデューサーの肩書きを持つ大熊重之氏(株式会社オークマ工塗・代表取締役)にお話をお伺いました。

■まず起業について伺います。

父が戦後(1959年)に塗装業を創業(大正塗装)したのが始まりです。当時は需要の多かった黒塗りのミシン塗装を行っており、ハケ塗りしていたようですが、ハケ目を無くすのが職人の技でした。私は、18歳で現場に入り営業や技術開発を経験して現在の株式会社オークマ工塗として2000年5月に創業しました。

■会社名が面白いですね。

 株式会社オークマ工塗の工塗は造語です。工業用塗装とコーティングの語呂合わせですね。今ではネット検索で、試作塗装でトップに出てきます。皆さん、塗装で困ってネットで探してこられます。

■試作塗装が売りですか。

 試作塗装を謳っていますが、全体の売り上げで見ると5%程度でしょうか。1点1万円から12万程度で請け負っていますが、新規顧客の窓口的な役割を担っていますので、法人向けに行っています。ここから量産につながることもあります。デザイン会社さんも来られます。個人向けをしないのは、BtoBの方が話がスムーズに進むからです。
試作塗装でも効率よく行う仕組みを取っていますので、利益率は高いですよ。受注可能な大きさは、小さいものはねじから大きなものは1m四方まで可能です。
当社の主力は、自動車向け(ナビの枠、カードキーの電池カバー等)です。高級自動車用のため埃・ゴミの付着に厳しい基準がありますが、対応できる設備にしています。

■オークマ工塗さんの強みとは何ですか。

ほこり・ゴミ不良対策向けのクリーンルーム

ほこり・ゴミ不良対策向けのクリーンルーム

当社は、お客様の困っている問題点に迅速に答えるために塗装方法・品質・価格・塗料の4つの最適提案をさせていただいています。具体的には、ほこり・ゴミ不良で困っているお客様には、クリーン化システムの提案。塗装で機能を付加して欲しいお客様には、各種機能塗装の提案。塗装が初めてで塗装の提案が欲しいお客様には、素材別の最適塗装の提案。焼付け塗装で困っているお客様には、各種素材の焼付け塗装の提案を行っています。つまり、塗装コンサルティングとして様々な塗装方法や最適な塗料を品質、コストを含めて提案しています。当社は塗料一つとっても、どのメーカーの塗料にも対応でき、場合のよっては、塗料の開発まで行っています。ここが他社にまねのできない強み
だと思います。
 
■どのような塗装があるのでしょうか。
昔ながらの手吹塗装の写真
昔ながらの手吹塗装
塗装といいましても色々あります。まず、塗装方法で説明しますと、静電・粉体・スピンドル・蒸着・電着・手吹塗装があります。塗装素材でみると、メラミン・アクリル・ウレタン・シリコン・フッ素・テフロンがあります。また、塗装する対象としては、アルミ・鉄・亜鉛・マグネシウム・ABS・ナイロン・PP・PBTがあり、それぞれの組み合わせでできるもの、できないものがありますが、お客様の要望から最適な組み合わせを提案させていただいています。
受注でみると、その8割が金属塗装で後の2割が樹脂塗装ですね。
 


■各種ある塗装でもオークマ工塗さんの一押し的なものは何でしょう。

カラーカチオン電着塗装
カラーカチオン電着塗装
水圧転写による塗装
水圧転写による塗装
特殊外観塗装(一例)
特殊外観塗装(一例)

 業界初のカラーカチオン電着塗装があります。またフォトコートといって、好きな写真画像を立体物に、まるで印刷したように塗装ができます。水圧転写といって、簡単に言うと、水面上に墨汁をたらして、紙に転写するのと似ています。 
最近では、不可能といわれていたシリコンゴムへの塗装(着色)ができるようになりました。パール・メタリックなどゴム着色ではできない色合いができますので、色展開のバリエーションが増えました。
当社では、一般に難しい塗装を手がけていますが、塗装には、ブレといって原料の色ブレ、製造環境による着色ブレなどが、どうしても生じます。そこを腕(技術)でカバーしています。特に品質には厳しく対応する社内体制をとっています。


■オークマ工塗さんの新しい取組みはありますか。

 一つは、「海外調達レスキュー隊」といって、海外からの調達部品の問題解決を図る組織を立ち上げることです。場合によっては現地までいって指導をしようと考えています。そのための人材紹介の免許も取りました。
もう一つは、塗料調色などの教育のスクール化です。これまでも教えていましたが、オーダーメードのセミナーを開催していこうと考えています。これまで培った塗装のノウハウを基に、塗装のコンサルティングやスクールなど、情報を売る方向へとビジネスの舵を切っていこうと考えています。



■ITの活用と効果について教えてください。

 新規顧客はほとんどネットからですね。5年前と比較すると、新規顧客は2倍に増えています。ただ、リピート率は低いようです。

タイヤ塗装(ゴム用特殊塗料使用)
タイヤ塗装(ゴム用特殊塗料使用)
面白い事例を紹介しますと、サンプルとしてタイヤに塗装をしたものをネットに掲載したところ、某商社から問合せがあり、海外で塗装技術+塗料のパックで売るという話に発展しました。タイヤ塗装(ゴム用特殊塗料使用)
ネットでは、いろいろな素材に塗装したものを積極的に情報発信しています。
今注目しているネット技術は、facebookですね。福井県の企業が熱心と聞いています。ツイッターよりも力を入れようと思います。facebookの良さは、ブログで作れてホームページっぽくなり、個人が明確で安心できることではないでしょうか。これからはfacebookでビジネスがつながっていくと思います。
 
■BMBへの要望はありますか。

 BMBの効果はまだこれからですね。BMBでもfacebookに取り組んでください。

※事務局では試験的に、facebookページを活用している会員向けに、Lite Boxを会員ページに掲載するサービスを始めました。また、「いいね!」を各投稿記事に追加し、その効果検証を行っています。

 今回のインタビューは塗装ショールームでお話を伺いました。お客様さんには、このショールームで現物を見ていただきながら最適な提案をされるとのこと。次から次へと新しいことにチャレンジしている大熊社長、益々のご活躍をご期待申し上げます。なおこれらの業績により、2010年度関西IT百選2010年度大阪府ものづくり優良企業賞を受賞されています。

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