第21回BMBインタビュー[有限会社アイ・シー・アイデザイン研究所]

2010/09/23 22:00
投稿者: kawamoto(oidc) カテゴリ:BMBインタビュー
有限会社アイ・シー・アイデザイン研究所

有限会社アイ・シー・アイデザイン研究所がデザイン・開発した知育玩具「nocilis(ノシリス)」が、本年度の第4回キッズデザイン賞(主催:特定非営利活動法人(内閣府認証NPO)キッズデザイン協議会、後援:経済産業省)フューチャープロダクツ部門 審査委員長特別賞に選定されると共に、たおれてもこぼれない「Kissシリーズ」がユニバーサルセーフティー部門で最優秀賞を受賞しました。ダブル受賞された飯田吉秋代表とデザイナーの黒田弥生さんにノシリスの開発の経緯を詳しく聞きました。


この度は、キッズデザイン賞受賞おめでとうございます。私も授賞式の会場に同席しておりましたが、大阪発のデザインが高く評価されたことに、我が事のように喜びを憶えます。

第4回キッズデザイン賞
第4回キッズデザイン賞
第4回キッズデザイン賞 授賞式の様子


さて、シリコーン製の知育玩具「ノシリス」の誕生について教えてください。


子どもが好きな遊びに積み木があるでしょ。積み木は落とすと大きな音がしますよね。“積む”という面白さの他に、子どもは破壊するときのあの音も楽しんでいるんですが、マンションなどでは階下に響くので親が嫌がります。
飯田さん
ノシリスは落としても音がしませんし投げても安全です。でも、音のしない積み木は魅力が薄れます。だから、ノシリスには新しい魅力を加えました。シリコーン製ですから摩擦抵抗と粘着性があり、今までとは全く違った積み方ができるわけです。でも、それだけではまだ不足です。そこで、素材の特徴を生かして“反転”ということを考えました。

四角形を裏返すとチョウチョに、三角形を裏返すとクローバーになる。全く新しい発想です。柔らかいので指で曲げることによってチョウチョは鬼さん、なめくじ、お化けなど、様々な創造も楽しめる発展性のある知育玩具です。遊び方は子どもが教えてくれるんです。

このシリコーンは、お母さんの乳房の固さにちかくしました。乳児が触ったり、揉んだりしたときに安らいだり、落ち着いたりできるように設計しています。

「ノシリス」には只のおもちゃではない知性を感じますね。
ノシリス
ノシリスを難しく語ると、微分幾何学と拘束条件の数学的な世界になります。一点拘束や二点拘束、30度拘束や60度拘束、重心の位置などの組み合わせによって四角形や三角形などの幾何形態を裏返すと何が起こるのか?どんな形になるのか?シミュレーションできる数式やソフトが未だないのです。それは誰も考えつかなかった世界初ということでもあります。

因みに、ノシリスは“拘束をつけて曲げる”ということが特許になっていますので、カバーする範囲は非常に広いわけです。デザインとは理論や機構までを考えて特許や実用新案が取れるものですから、意匠とは違うというのが私の基本的な考えです。

特許は維持費用がかかるので、費用対効果を鑑みて中小企業では尻込みするところも多いと聞きますが。

特許は売り上げのためと言うよりも、私がこの世に生きた証です。新規性や独創性を客観的に示す手段として、この世に何が残せたかというプライドのために取っています。そうは言ってもこの商品をコピーすることは簡単ですから、ノシリスの内側にはICI designとMade in Japanという文字を薄いエンボスで入れています。これは、私たちが考えたオリジナルですよというささやかな主張です。ブランドを侵害されないためのメンタルなコピー予防策でもあります。

「ノシリス」の価格設定はどのように決められたのでしょう。

私は以前、松下電機産業株式会社(現パナソニック株式会社)に工業デザイナーとして勤めていました。その時に、松下幸之助さんから薄利多売は長続きしないという教えを受けました。ノシリスは感性価値商品ですから安く売れば必ず失敗します。
ノシリス
14個セットのノシリス1が10,500円(税込) 、8個セットのノシリス2が6,300円(税込)ですから、普通に考えると母親は買わない値段です。実は、団塊世代が孫のためにプレゼントする商品なのです。かわいい孫の知育・創育のために、感性豊かな優しい子に育って欲しいという願いを託した商品。そこで、2つのセットをギフト価格に設定しました。

誤解を受けないように言っておきますが、私たちはノシリスで儲けようという気は最初からありません。あくまでも、アイ・シー・アイデザイン研究所の宣伝と社会貢献のためのケーススタディです。

デザインで社会貢献とはどのように進められるのでしょう。


ノシリスは三年後には、売り上げの約3%を社会貢献のための活動基金に提供する予定です。
黒田さん
ノシリスを手にした子どもたちが3歳、5歳、8歳と成長するにつれて、あの時プレゼントされたおもちゃが、世界中の恵まれない国の人々の役にたっているんだという事実を様々なメディアで知るわけです。

最近は社会や家族の関係性やつながりが薄れ、すぐにリセットしてしまう人々が増えていますが、人と人の愛や絆をしっかりとつなぎ止めておくために、あの時贈った・遊んだ想いを改めて可視化する。そういったメッセージ性を内包した贈り物なのです。

景気のいいときにメセナやエコロジーを謳っていた企業は今どこに行ったのか?現在はデザインビジネスが薄利多売、その場限りのファッション(華飾)に偏り過ぎてると思います。

デザインの社会的な地位を高めるためにも、アイ・シー・アイデザイン研究所は、ぶれずに芯の通ったデザインを手がけていきたいと思います。

最後に、ノシリスのパッケージはBMB会員の芳川紙業さんですよね。
ノシリス
芳川紙業の須川さんには、パッケージアイデアやサンプルづくりの繰り返しで無理も聞いていただき、大変お世話になりました。おかげさまで、物語性のある魅力的なパッケージに仕上がりました。芳川紙業さんは、デザイナーの細やかな要求にも快く応えてくれるスキルを持った企業ですね。


硬派な?インダストリアルデザイナーとして、これからもBMB会員にいい刺激を与えてくれることを期待しています。
本日はどうもありがとうございました。


タグ:BMBインタビュー アイ・シー・アイデザイン研究所 ノシリス

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