1月12日の数字:目安は1万時間

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ビートルズがブレイクした秘密は無名時代の「1万時間」にあったという。
名付けて『魔法の1万時間』。
何かに秀でるために最低限必要な時間をどうやってひねり出せばよいだろうか。

宮本武蔵は一万日


『五輪の書』に記された宮本武蔵の言葉である。剣の道を究めるためには万日、つまり約30年の歳月をかけて打ち込むことが必要というわけだ。吉川英治版『宮本武蔵』を座右の書とした極真空手創始者の故・大山倍達は、千日をもって極とし、万日をもって真とするという言葉を作った。


空手の道も同じく、毎日ひたすら稽古を重ねて30年つづけることができれば、その真を極めることができるのだろう。何かを修業して達人といわれるレベルに達しようと思えば、それなりに人生をその道にかけなければならないという経験知が、この言葉には示されている。


ビートルズは1万時間


一方で少し前に、興味深い説をネット上で見つけた。mehoriさんのブログ『あなたも「天才」になれる? 10000 時間積み上げの法則』では、1万時間が一つのマイルストーンになるというのだ。たとえばビートルズ。ジョン、ポール、ジョージと最初のドラマー・スチュアート・サトクリフがリバプールでグループを結成し、売れるまでに演奏した時間が1万時間なのだという。


ジョンとポールが出会ったのは、確かポールが15歳の頃のはず。シングルデビューしたのが、その5年後である。ということは5年間で1万時間演奏した計算になる。ということは一年間で2000時間、毎日やったとしてだいたい5時間強。ロックンロールが大好きで、プレイしているのが何より楽しければこれぐらいは楽勝だろう。


もっとも1万時間やれば、誰もがビートルズになれるわけじゃない。飛び抜けた存在となるためには、才能が必要だ。1万時間はブレイクするために必要な下積み時間の目安であり、そこから突き抜けることができるかどうかは「偶然のタイミング」にもよるらしい。1万時間かけて一生懸命やってきたことが、自分の才能にあったことなのかどうかが第一。さらには時代の波といった神のみぞ知る要因が左右する部分も大きいということだ。


ビジネスパーソンの1万時間


ブレイクできるかどうかは別として、何かをマスターするためのベーシックな練習時間として1万時間は一つの目安になる。たとえばごく普通のビジネスパーソンならどうだろうか。


新入社員がどれぐらいの期間で一人前になるかを考えてみよう。仮に1日8時間働くとして、1万時間なら1250日である。年間250日働くとして、ざっと5年も経てば、最初は頼りなかった新人君もそれなりに仕事ができるようになっているんじゃないだろうか。


仮に毎日2時間ぐらい残業し、がんばって仕事を覚えれば、さらに1年半ぐらい短縮できる。逆にいえば入社5年目ぐらいで、できる奴は頭一つぐらいは抜け出てくるといえるのかもしれない。


プロになるための1万時間


ただしごく普通にビジネスパーソンとして1万時間を過ごしても、それで何かのプロになれるわけではない。逆にいえば、何かの専門職(コンサルタントでもデザイナーでもSEでも何でもいいけれど)で1人前のプロになるために1万時間かかるとすればどうなるか。普通に考えれば、ビジネスパーソンと同じく6年となるのだが、専門職の場合は、そんなにのんびりとはしていられない。


少なくとも3年ぐらいでプロとして稼いでくれるようにならなければ、彼らに給料を払う側が困る。だから残業で追いまくるか、あるいは極めてハードなOJTで鍛え上げることになる。単純計算なら1日16時間やってもらわないと3年間で1万時間には達しない。


もっともこうした専門職については、そもそもそれが好きだからやっている人が多いはず。ということは、まずその仕事への適性に恵まれているだろう。さらには仕事に就くまでにそれなりの勉強を積んでいるケースも多いはずだ。となると3年ぐらいで一人前になる人がいても不思議はないだろう。


ビジネスパーソンでありながら一芸に秀でるために


では、普通のビジネスパーソンが何か専門的な技術を身につけるためにはどうすればいいのだろうか。何を極めるにしろ、とりあえず1万時間をひねり出さなければならない。といって毎日1時間ずつやっていたのでは30年かかってしまう。


そこで、まずハードルを少し下げて目標設定してみてはどうか。たとえば中小企業診断士の試験に合格するための勉強時間は1000時間といわれる。これを第一の目安とする。これぐらいの時間を何か一つのテーマの勉強・修練に費やせば、そこそこのレベルには達するはずだ。


プロといえるレベルまで到達しないとしても、その分野についてなら人に教えることができる、あるいは人に読んでもらってそこそこ納得してもらえるブログを書けるぐらいにはなるだろう。


ポイントは、ここ。まず最初の1000時間をできる限り短期間でやり遂げること。この期間を駆け抜ける時間が短ければ短いほど、あなたの変身ぶりは際立つことになり、まわりの見る目が変わるはずだ。これが狙いである。


あなたが短期間に変身すれば、そこから相乗効果が生まれる。つまり「この分野の仕事なら、あいつが得意だから任せてみよう」とか「このテーマについては彼が専門だ」といった形で、得意分野の仕事に携わる時間が増えてくるはずだ。すると1日8時間丸々は無理だとしても、仮に5時間それに関わるようになるとどうなるか。土日も何かしら勉強するとすれば、意外に5年ぐらいで1万時間を突破できるはずだ。


こうなればしめたもの。自分のやりたいことでプロとなり、自他ともに認められる存在になれる。さらには、そうして身につけたプロとしてのノウハウは、おそらく独立したとしても評価されるだけのレベルまで到っているはず。


目安としての1万時間作戦、始めるなら早いうちがおすすめだ。