2.5-PLY GAUZE TOWEL
第9回BMBインタビュー[村上紙器工業所]
- 2008/12/17 10:00
- 投稿者: nishimura(oidc) カテゴリ:BMBインタビュー
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「夢は貼箱(はりばこ)業界のフェラーリ」という村上紙器工業所代表村上誠氏。接着剤にニカワを使う貼箱は昔からエコ商品でした。そのこだわりと意気込みについてお聞きしました。
■貼箱とは、どのようなものでしょうか。
貼箱というのは、中芯がボール紙で、厚みでいうと1ミリから2ミリぐらいです。それを型抜きなどして、立ち上げて角を紙テープなどで留めて四角い箱にします。その後、糊付けした紙を包んでいきます。貼って作るので、貼箱といいます。
皆さんがよく目にする箱は、組箱といわれるものでしょう。これはトムソン加工といわれる木型で抜く方法で作ります。平面のものを接着剤を使わず組み上げていくので組箱(トムソン箱)といいます。
この組箱と貼箱の大きな違いは、組箱はコストが安く大量生産に向いていることです。貼箱にも量産用に自動化の機械があり、バレンタインのチョコレート用ですと、数万から数十万個以上生産する時には、この自動機を使って生産されます。それに比べ、組箱は300万個でも、ボール紙に印刷して型抜きするだけなので大量生産向きです。当然組み立てるのは人海戦術でこなしますがコストは安くつきます。
しかし、すべての箱が組箱でいいかというと、そうでもなくて、中身が数千円以上となると高級な箱が求まられてきます。特に数万円もする化粧品などになるとより高級感のある貼箱の出番です。うちはこの高級品にターゲットを絞っています。
高級感を出す要素として、持ったときの重量感や堅強性があります。組箱ですと厚さが約0.5ミリ前後で、強度もあまり強くないのですが、貼箱ですと1ミリから2ミリ程度ありますので、板のようにしっかりしており、重さもありますからより高級感が出せます。
■貼箱は、クライアントから直接受注するのですか。
いろいろですね。最近ネットを通じての取引をしていますので、クライアント直もあるし、中間に印刷屋さんやパッケージの業者さんが入る場合があります。形状やデザインに関しても、クライアントの指定があるもの、分からないので考えてくださいといわれる場合もあります。
■貼箱に使う糊は、化学糊ではないのですか。
貼箱で使う糊の99.9%は「ニカワ」です。ニカワは一般的に「粉末ニカワ」を使いますが、固形分が40%であとは水分です。
ニカワを使う理由ですが、ニカワは70度で湯煎にかけると50度前後の温度になります。それを紙に塗布し押さえながら貼っていくと温度が急激に下がり、一瞬にして固まってくれます。化学糊は接着するまで押さえておく必要があります。そういう理由で、この業界ではほぼ100%ニカワを使っています。
ただし、紙にフイルムが貼られている場合には、ニカワでは接着しません。浅い箱の場合には、ニカワを使っても擬似接着といって実用上問題なく作れますが、深い箱やお客さんの要望で化学糊を使う場合もあります。
ニカワを使っていて興味深かったことがあります。ある精密機器のパーツ用の抱材として提案を依頼され貼箱のサンプルを作りました。大手企業でもあり環境に関心が高く、接着剤に天然素材のニカワを使っているということで、すごく評価されました。
環境問題でいうと、今のトムソン箱は安いですが、流通の過程で必要な箱という位置づけで、お客さんが捨ててしまうということがあります。その点、貼箱はいいものを作れば、お客さんは残してくれます。お菓子屋さんの例でいいますと、お店に代わって貼箱がお客さんを通じてPRしてくれるという効果が生まれます。組箱と違って、残っている期間が長いほど企業にとってもメリットは高く、販促ツールになると思います。
これはコーヒー用の貼箱で、世界最高品質のコーヒーということで新聞に掲載された広告です。箱にもこだわっておられましたので、こちらから提案させてもらい採用されました。
■素材にこだわりをもっておられますね。
貼箱の特徴・良さは素材感です。組箱の場合、基本的に印刷なのでビジュアルに見せるには効率がいいのですが、貼箱を使うクライアントは、他と違ったいいものにしたいという思いが強く、予算が許せば素材のいいものを薦めています。ヒアリングをしてイメージを聞き出し、形状の提案、素材の提案とコンサルティングに近い営業を行っています。
■サイトでは、どのような点に気をつけておられますか。
こだわりをもったクライアントに訪問してもらえるように工夫しています。わざと、トップページの下に3つの「ごめんなさい!!」を載せています。大量生産できないこと、待たせるかもしれないこと、値段は安くないことです。安いものだけを求めている人ではなく、いいものを求めている人だけに来て欲しいサイトとして作っています。独学で勉強してサイトを作りましたし、ネット経験は7~8年になり運営のノウハウも身につけました。
ひと月当たりの件数・ロット数が少ないですが、高い単価を維持しています。検索キーワードとして、最近「感性品質」を使っています。また、顧客の絞込みサイト作りをしていますが、弊社の価値を認めていただき、高品質のパッケージを必要とするお客様を少しずつ増やしていきたいです。
ネットでは、思いもしない注文が入ることがあります。例えば、取引先にプレゼンするための試作品用箱の案件です。ディスプレイとしての機能が求められた事例です。(デザイナーがよくやるプレゼンの一環ですね)
■アーティストやデザイナーとコラボレーションされていますか。
最近はメビック扇町に通いだしており、昨年から「この街のクリエイター博覧会」で声を掛けて頂き、それがきっかけとなり展示会の協力などさせて頂いています。うちの品質・技術を生かせるは、紙業界よりもクリエータさん向けの方が、戦略としてあっていると思います。営業的ではなく、よい関係を持つようにしています。今年になってやっと知ってもらえるようになってきました。その関係で、知り合ったデザイナーさんにロゴを作って頂きました。
■「感性品質へのこだわり」とは、どのようなことでしょう。
昨年、経産省の感性価値セミナーに参加したのと、クリエータのお付き合いを通じて、最終的に商品を選ぶ要因は、デザインであったり、手触りであったり、人の感性に響くもの、データに現れないもの、そういう価値で最終的に決めるのではないかと思いました。
また、別のセミナーでは、日本のメーカーは消費者を向いていてユーザーを向いていないという話がありました。それどう違うのですかと質問したら、消費者というのは単に商品を消費する人、金儲けをさせてくれる人。本当のファンであるユーザーを向いていないということで、ちょっと衝撃を受けました。
別のセミナーでも、ドイツ車はものづくりのアイデンティティが入っており、デザインが変わっても一目でどこの車か分かるという話でした。
そこで、フェラーリが出てきます。一台2千万円以上。注文しても1年~2年待ちは当たり前です。絶対的なブランド価値があるのですね。そういうブランド価値を持つ企業にあこがれて、大風呂敷ですが、「貼箱業界のフェラーリを目指す」といいました。
そして、「必要ではないが、欲しくなるものを作れ」という奥山清行氏の言葉が印象に残っています。
■最後に、これまで技術的に一番難しかった依頼はなんですか。
デザイナーさんの依頼で、どこさんも作れないといって断られたようで、ネットで探されてうちにきました。それは、ヤノベケンジ氏のリトグラフ用に作った一品ですが、かなり苦労しました。
※村上社長は、箱作りのプロデューサーとして新たな取組みを始めています。クリエータ達とのコラボ、展覧会、ワークショップの開催と、夢の実現に向け着実に歩み始めておられます。本日はありがとうございました。
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