産技研セミナー&BMB第33回勉強会報告

去る1月22日(金)、大阪イノベーションハブにて行われた「産技研セミナー&BMB第33回勉強会〜進化するマテリアル技術と感性価値の融合〜」について報告します。


基調講演:「軽自動車に求められる素材とその質感表現」
ダイハツ工業株式会社 デザイン部 デザイン室 課長 佐々木克典 氏

ダイハツ工業株式会社 デザイン部 デザイン室 課長 佐々木克典 氏

今や日本の自動車販売台数で4割を超える軽自動車。

軽自動車は日本で一番小さい規格のクルマ。限られた寸法や排気量という制約条件の中で、どれだけユーザーの心に響く商品づくりができるかがデザイナーに課せられた使命である。

最近では、広々とした室内空間をウリにした軽自動車が増えており、よりおしゃれな、個性的なクルマが欲しいというユーザーのニーズに応えるため、色・素材開発へのウェイトが高まっている。

今回のセミナーのテーマである、CMFは、カラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字。色、素材、表面処理=加飾(メッキ、塗装など)は、クルマのデザインに欠かせない技術。

ダイハツ工業株式会社 デザイン部 デザイン室 課長 佐々木克典 氏

2015年9月に発売した「キャスト」は、「ちょっといい時間」を感じてもらえるクルマをテーマに、世界観の異なる3種類のクルマ「スタイル」「アクティバ」「スポーツ」をデザインした。

「スタイル」のコンセプトは、「落ち着けてうれしくなる」
カフェで休息してアップルティを飲んでいるようなエレガントなシーンを深みのある赤とメッキモールで表現した。

「アクティバ」は、ライブハウスのスポットライトのような、メタリックで躍動的な雰囲気を刺激的なブルーで表現した。

「スポーツ」は、白をベースに要所にちりばめた赤の差し色でレースカーのようなワクワク感を演出した。

一方、インテリアで一番目立つ部分はダッシュボードまわり。
車種ごとに個性を持たせられるように形状と加飾に変化を加え、華やかさやスポーティ感を演出した。

加飾技術には水圧転写を使い、印刷層を重ねることで奥行感を出している。

色は形より先に目に飛び込んでくることから、訴求表現として重要。
最初に「おっ!」と目を引く新鮮さを感じてもらうために、「ルーフラッピング」も採用している。

ボディとルーフのツートンカラーは、ルーフに特殊フィルムを張っている。

細かな凹凸と半光沢表現は、ボディの光沢面とのコントラストがつき、これまでの塗装ではできなかった表現が可能となった。

ダイハツ工業株式会社 デザイン部 デザイン室 課長 佐々木克典 氏

ダイハツでは、今後も一人一人にマッチングできるクルマづくりを目指していく。
そのためには更に、塗装と加飾、材着の精度を1つ1つを突き詰めていく。

また、マテリアルの新しい組み合わせや、組み合わせの妙に素材を活かすことも考えて行きたい。

例えば、布やレザー等のもっと柔らかい素材も、新たな観点でクルマに取り込める素材として研究していきたい。

ダイハツ工業株式会社 デザイン部 デザイン室 課長 佐々木克典 氏

「基材の特性を活かしたフェノール樹脂複合材料とその用途例」
リグナイト株式会社 取締役 井出 勇 氏

リグナイト株式会社 取締役 井出 勇 氏

創業して92年。以来、フェノール樹脂、特殊樹脂を中心に工業製品を提供してきた。

当社では、樹脂部門、成形・加工部門、鋳型材料・けい砂部門、開発部門の組織体制により、各産業のニーズに対応した、多種多様な樹脂材料から、工作機械用歯車やローラー等の各種成形加工まで細かなサービスを提供している。

特に「球状フェノール樹脂」は、ミクロンオーダーでの粒径制御により、球状で流動性が良く、高充填が可能となった。

リグナイト株式会社 取締役 井出 勇 氏

また、新たに開発した調製法による、「黒鉛-フェノール樹脂複合材料」は、炭素材料の特性を最大限引き出し、安定した品質の成形を可能とする。

新たに開発した鋳型造形法は、従来法に比べて鋳型材料の充填時に発生するガスを低減し、鋳型材料成分の未硬化部を減少させることで、作業環境の改善と鋳物の高品質化を両立している。


「炭化水素系熱硬化性樹脂を用いたRIM成形と応用事例」
RIMTEC株式会社 販売部 岸 直哉 氏

RIMTEC株式会社 販売部 岸 直哉 氏

日本ゼオンと帝人化成が、それぞれの一事業であった炭化水素系熱硬化樹脂(PENTAM,METTON)の製品開発、販売事業を統合して誕生した会社です。

この樹脂は耐熱性、耐水、耐薬品性、耐衝撃性に優れ、低粘度、速い硬化速度などにより大型成形が容易な特徴を有し、自動車、化学処理設備、住宅設備、医療機器など様々な分野に利用されている。

技術開発においては、主力製品の樹脂材料に新たに開発した硬化剤を用いることで、オープンモールド化、難燃性、導電性付与、フィルム、薄肉成形可能にする、多様な機能を実現する樹脂製品を開発し、従来とは全く違った新しい領域への用途開発を進めている。

RIMTEC株式会社 販売部 岸 直哉 氏

新たに開発した技術は、学会で発表し、有効性について評価を受けている。


「ダイヤモンドライク カーボン(DLC)の基礎と応用」
(地独)大阪府立産業技術総合研究所 金属表面処理科 主幹研究員 三浦 健一 氏

(地独)大阪府立産業技術総合研究所 金属表面処理科 主幹研究員 三浦 健一 氏

ダイヤモンドライクカーボン(DLC)は、その優れた特性から、自動車などの各種機械部品だけでなく、生体材料や装飾用途など、着実に応用分野が拡大している表面材料である。

基調講演:「軽自動車に求められる素材とその質感表現」

国際標準化活動や代表的な適用事例など、DLC技術の動向について概説するとともに、国が進めている標準化作業の説明、ならびに府立産技研を含む全国の公設試験研究機関が共同で進めている、中小企業向けの品質評価の手法の確立に向けた取り組みについて説明した。