知的財産の基礎知識(4)

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第4回は、意匠権の登録要件についてポイントだけを説明したいと思います。

第4回「意匠権の登録要件」

 今回は、意匠権の登録要件のうちの特に重要な工業上利用性、新規性、創作非容易性について説明したいと思います。

 意匠法の保護対象は前回で説明した「意匠」ですが、この「意匠」に該当するだけでは、意匠権を取得することはできません。

 以下に説明する工業上利用性、新規性、創作非容易性などの登録要件を具備するものを特許庁に出願(申請)し、審査官の審査によって登録してもよいと認定された後に、所定の登録料を特許庁に支払うことにより、意匠権を取得することができます。

(1)工業上利用性について

 工業利用性とは、その意匠についての製品が量産できることを意味します。すなわち、量産できれば手工業でも工場での大量生産でもよいと言うことです。

 ですから、彫刻や絵画のようないわゆる一品製作物はこの要件を具備していないことになります。

(2)新規性について

1)特許庁に出願する前に、日本国内又は外国でその意匠が公然と知られていた場合

 例えば、特許庁に出願する前に製品を販売していた場合、特許庁に出願する前にその意匠の内容を秘密にする義務のない者に見せた場合などが該当します。

2)特許庁に出願する前に、日本国内又は外国で頒布された刊行物に記載され又はホームページに掲載されていた場合

 例えば、特許庁に出願する前に雑誌にその形状なとがわかるように製品が掲載された場合、特許庁に出願する前に自己のホームページにその形状なとがわかるように製品を掲載した場合

3)前記1)及び2)で開示されていた意匠と類似する意匠である場合

 前記1)及び2)によく似た形状などの意匠である場合(よく似ているか否かは大変困難な問題であり、専門家でも判断が分かれてしまうところです。)

 以上の3つに該当する場合には、新規性がないとして意匠権の取得はできません。

 

 但し、意匠は物品の外観に関するものであり、その売れ行きなどを確認したい場合もあることなどから、その例外があります。前記のように新規性を喪失しても、例えば最初に見せた者からそれを見たとの所定の証明書をもらって、その見せた日から6ヶ月以内に意匠登録出願(申請)すると共にその証明書を提出すれば、新規性を喪失しなかったものとみなされます。

 この要件におけるポイントとしては、意匠権を取得したいと思われる場合には、特許庁に出願する前には前記のような新規性を喪失するような行為を行わず、意匠登録出願することが重要だと言うことです。

(3)創作非容易性について

 特許庁に出願する前に、その意匠がその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作できるものでないこと、が必要です。

 もう少し簡単に言えば、そのデザインを創作する分野のデザイナーが特許庁に出願する前から日本国内又は外国で開示されている具体的な製品の形状など又は抽象的なモチーフに基づいて容易に思いつくような意匠は、意匠権を取得することができません。すなわち、世界的に見て斬新なデザインでなければならないと言うことです。

 例えば、東京タワーの置物、星形の固形入浴剤などは創作容易であると考えられます。