ORIST技術交流セミナー・ビジネスマッチングブログ【BMB】第39回勉強会報告

去る3月6日(火)、マイドームおおさかで45名の参加を得て開催された「具体的事例で学ぼう! 知っておきたい模倣デザイン対策」では、中小企業やデザイナー向けに、模倣品に対してどんな知財対策があるのか?、どうすれば有効な知財が取れるのか?などについて、古谷国際特許事務所 弁理士の松下 正 氏に、具体的事例を用いて分かりやすく、ストーリー仕立てでご説明いただきました。

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◆シーン1 会社Xは、デザイン会社Yに頼んで、商品を発売したが、半年後、中国から模倣品が出てきた。会社Xは、デザイン会社Yに相談。デザイン会社Yは自社で作ったデザインなので、著作権で対応できると考え、専門家に相談した。 さてどうなるのか?

原則、応用美術品は著作権では保護されない。
(応用美術品=美術作品を実用品に応用したもの・いわゆる一般的な量産品)

参考判例:ぬいぐるみ形態模倣事件→著作権による保護を受けられない。

しかし、稀ではあるが応用美術品で著作権を認められたケースもある。


参考判例:TRIPP TRAPP事件→著作権による保護を認めた。

そっくりのコピー商品は、不正競争防止法の取り締まり対象である。
あるいは、模倣品が販売開始から3年以内の商品と実質的に同一の形態であること。(不競法2条1項3号)

参考判例:タオルセット事件→ほぼ同一の形態であるとして、不正競争防止法の対象とした。

まとめ

  • 応用美術品は著作権で保護するのは難しい。
  • 不正競争(商品形態模倣)は3年の限界。
  • 意匠登録できれば20年間保護。

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◆シーン2 会社XはデザイナーYにイラストを依頼し、そのイラストをカタログの表紙に使用していた。会社Rから「自社のイラストと似ているので著作権侵害である」と警告がきた。
たしかに、似ているようにも思えるが、どのくらい似ているとダメなのか?

・デッドコピーでなくても著作権侵害となる場合あり。
・翻案(=翻案とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的な表現形式を変更して新たな著作物を創作する行為)
・オリジナルの本質的特徴を直接感得できるか?

参考判例:博士イラスト事件→きわめてありふれたもので表現上の創作性がなく、本質的特徴を直接感得できない。

参考判例:立体イラスト事件→一部の特徴的な表現について創作性が認められ、本質的特徴を直接感得できる。
 

まとめ

  • オリジナルの本質的特徴を直接感得できるかで判断される。
  • 依拠していなければ(独自創作)侵害ではない。
  • 意匠と違い、創作により権利発生(申請不要)。

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◆シーン3 会社Xは、新商品のブランド名を考え、社内デザイナーがこれをデザイン化し使用していた。ところが他社から商標権侵害警告が届いた! なぜなの?どうすればいい?

・商標権が有効に存在&権利範囲内なら、中止を検討すべき。
差止や損害賠償のおそれ→専門家に相談する!
・期限内に結論が出せない場合でも相手に連絡を取る。

参考判例:湯〜とぴあ事件→主要部分の「湯~とぴあ」だけを比較すると、相手方商標の権利侵害と認定できる。

まとめ

  • 商標は使用しているだけではダメ(先にとったもの勝ち)
  • 権利内容は商品・サービスとの掛け算(類似群を把握する)

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◆シーン4 会社Xは、商品Mを10年くらい前から販売し、ユニークな形状として市場を独占。
業界紙などでも取り上げられ、◯◯型といえばX社の商品といわれるまでになった。
ところが最近、似たものがネット上で販売されるようになった。
当初、意匠権の取得を考えたが行っていない。なんとかできないのか?

参考判例:ユニットシェルフ事件→原告の特徴的な部材の形態が周知の商品等表示であり、不正競争防止法の対象になるとして、被告ユニットシェルフの差止めが認められた。

参考判例:コメダ珈琲店・店舗外観事件→原告の特徴的な店舗外観が不正競争防止法の対象になるとして、被告店舗外観の使用差止めが認められた。(和解成立)

まとめ

  • 不正競争防止法の保護を受けるには、そこの商品であると、みんなが認識していることを証明する必要がある。
  • どの程度の資料が必要?テレビCM、雑誌CMなどの証拠を積み重ねる必要あり。