テレビ局が土管屋になるとき

今日のマーケティングブログは、テレビの未来について。
テレビ価格の大幅な下落が意味する、
背景で起こっている大きな変化について考えてみました。

3万円のTV vs 8万円のヘッドホン

テレビの価格が、投げ売りに近い状態まで下がっている。かつては1インチ1万円が相場だったはずなのに、今や1インチ1000円以下でも売れない。日本のテレビメーカーが軒並み赤字決算となっているのも、誠にもって「うべなるかな」。その理由は、どこにあるのだろうか。

一方では8万円のヘッドホンが売られている(日経産業新聞2012年3月14日付23面)。家電製品が全般的に売れないわけでは、決してないのだ。価値を認める商品に対しては、それなりの対価を払ってでも手に入れたい気持ちに変わりはないのだろう。

だとすれば、テレビの価格低下は、大きな構造変化の象徴と考えられないだろうか。つまり、今やテレビに価値を見出す人が劇的に減っているということ。もう一歩深掘りするなら、以前ならテレビを「見て」過ごしていた時間を、他の「何かをする」ことに費やしているのだろう。

ということは、広告媒体としてのテレビの価値も著しく低下しているはず。その証の一つが、衛星放送の韓国ドラマ・オンパレードではないか。昼間、BS放送にチャンネルを合わせてみると、韓流ドラマかテレビ通販番組ばかりである。日本のドラマもたまにやっているが、それは二昔前ぐらいのヒットドラマがほとんど。

地上波はどうか。もちろん、今でも月九などはドラマをやっているけれど、印象的には8対2ぐらいの割合で、バラエティもしくはニュースだ。推察するに、きちんとしたドラマを数多く作り込めるだけの予算がないのだろう。早い話、スポンサーが付かないのではないか。費用対効果を考えたとき、テレビでCMを打つべきなのかどうかをスポンサーが、さらにシビアに考えるようになったのだと思う。

結果的に『テレビがつまらない→テレビを見なくなる』流れが、濁流のように激しくなりつつある。しかも、この流れはループして自己増殖する。テレビを見てもらえないのなら、スポンサーはさらに予算を絞る。テレビはよりつまらないものとなり、それでも視聴率を稼がんがために、スキャンダラスなニュースを追いかけるようになる。事故報道の醜悪さを想い出せば良い。まさに悪循環である。

テレビにとって不幸なのは、今はテレビに代わる選択肢が、いくらでもあることだ。いまテレビのことを「娯楽の王様」などと言っても、ほとんど誰も納得しないだろう。

では、テレビはこれからどうなるのか。土管屋を目指せば良いのではないか。スポンサーから広告料を取り、自前でコンテンツを作って流すのではなく、電波を土管として提供する。土管の中を流れるのは、コンテンツを作って人に見せたい人の作品だ。

もちろん、ビジネスモデルを大転換するのだから、テレビ局は従来のテレビ局のままではありえない。というぐらいにドラスティックな変化を考えているテレビ局は、ない(と思います、たぶん)。

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