酎ハイ・カクテル新商品のポジショニング

マーケティングのキモともいえるのがポジショニング。
最新の酎ハイ・カクテル市場の新製品について、
各社がどんなポジショニングをとっているのかを考えてみました。


前年対比1~8%増

缶入りの酎ハイ・カクテル市場が伸びている。日本酒が右肩下がり、ビール・発泡酒も伸び悩む中、アルコール関連では唯一といっていい成長市場だ。これを『RTD(Ready To Drink=すぐに飲める)』市場と呼ぶらしい。

ちなみに、この『RTD』なる用語、誰がいつ言い出したのかがよくわからない。とりあえずサントリーのサイトには2010年のRTDマーケットレポートがある。だから、少なくとも2年前から使われて用語であることは間違いないようだ(http://www.suntory.co.jp/news/2010/10665.html)

なぜRTD市場が伸びているのか。その理由を、日経産業新聞は「各社が競って新商品を出すことで、顧客層が拡大してきたから」と書いている(日経産業新聞2012年4月4日付9面)。新商品には次の2つの傾向がある。一つは低アルコール志向で、これは主に3%以下。もう一つは高アルコール志向で7%以上だ。それぞれに明確なターゲットが設定されている。

30~40代女性と20代の男性。どちらが高アルコール志向か、おわかりになるだろうか。男性じゃなくて女性である。最近の若い男性は、ガツンと来るアルコール飲料は好まないらしい。アルコールメーカー4社が、一様にこのマーケットに参入している。そこで各社の新商品のポジショニングがおもしろい。

サントリー「こだわり果樹園のお酒」、キリンビール「ワインスプリッツァ・ロゼ」、アサヒビール「アサヒ スパークス刺激的カシスオレンジ」のポジションを並べてみると、こんな具合になる。



ターゲットの年代と嗜好を軸として切れば、見事にポジショニングが分かれている。ほぼ同時期に出た商品だろうから、各社の戦略の違いがはっきりと出たようだ。もちろんターゲット設定により、当然4Pも変わってくる。


おもしろいのは、まずサントリー「こだわり果樹園のお酒」の店頭POPだ。これは、ターゲットとする「シニア世代がみつけやすいよう店頭販促(POP)の文字を大きくし、文字色にも配慮した(前掲紙)」らしい。ちょっと酒屋にリサーチに行って、できれば写真を撮ってきたいと思う。


キリンビール「ワインスプリッツァ・ロゼ」が狙っているのは、30~40代である。よって、こちらはテレビCMのキャラクターに俳優の市村正親氏を起用している。これも、なかなか興味深い設定だ。30代から40代女性の皆さまは、市村正親を好むのだろうか。甘みと酸味のバランスのとれば商品特性を考えるなら、個人的には『嵐』の相葉くんあたりが、良いと思うのだけれど、いかがでしょう?


そして、アサヒビール「アサヒ スパークス刺激的カシスオレンジ」が取ったポジショニングが、この3商品の中では秀逸と評価していいのかもしれない。酎ハイ・カクテル系のRTD市場の中でもアルコール度数の高い商品には、甘さをメインに打ち出したものがなかったという。そこに目をつけ「甘い味を好む女性の需要を掘り起こす(前掲紙)」そうだ。


これがウケたのか、アサヒビール「アサヒ スパークス刺激的カシスオレンジ」は、売れ行きが予想を上回っている。買っているのは「都会で働く単身女性(前掲紙)」だ。


なかなかおもしろい傾向がうかがえる。と同時に、アルコール市場のターゲットとして、完全に女性が定着してきているのだから、次は「おつまみ」も女性向けで、しかも比較的強いアルコール度数に合うもので、さらにヘルシーとか太らない系のものが出てくるのではないだろうか。